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消えていく顔

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 女の顔が紅潮していた。唾を飛ばし、捲し立てて。対面に座る、その視線を受け止める男。顎髭を撫で、静かに紡いだ。

錯覚のまま

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  記憶を辿って言葉を交わす。何度も見た、同じ顔と。僅かにズレて。

ただ、純粋に

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   一人、ベンチに腰掛けていた。ほつれた服の袖から覗く手は、黒く汚れている。膝に置いた袋を弄り、パンを掴んだ。

選べるなら

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  淡い橙色の液に浸され、形成していた。透明な皿に乗せられ、線を刺し込まれる。

確かな存在

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  細い管先を泡立つ液に浸し、口に咥えた。鼻から空気を吸いこみ、ゆっくりと吐き出す。

種の中で

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  黄金と緑の階調が拡がっていた。風が吹く度に揺れ、色彩を塗り替える。その波に、違う色が混ざっていた。

いない気がして

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  アルバムの中で笑っていた。分厚いページを捲る度に、子供の笑顔が目に入る。

跳ねたコイン

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   目を伏せて掌を擦る。前に置いた空き缶を凝視して。コンクリートの地面が臀部を冷やす。

溢れた珈琲

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   瞼が降りてくる。首を振って目を見開いた。机に置いてあるモニターを眺めていたが、段々頭が下がって来る。

10^-10^50の虚構

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    空間に形成される。柔らかく、幾つもの皺が複雑に編まれた存在が。

少女の花弁

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   夕暮れに染まる景色の下で、女と少女が手を繋いでいた。時折、顔を見合わせて。

巡る日常

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 巨大な球が置いてある。公園を埋め尽くしていた。ブランコや滑り台は見当たらない。

視線と誇り

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  視線が注がれていた。身体が僅かに強張る。小さく息を吐いた。唇を舐め、引き結ぶ。

何処へ向けて

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   垂れ下がる太い綱を握り、何度か振る。大きな鈴が鈍い音を鳴らした。両手を合わせて目を閉じる。

手放した石

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   拡く波打つ海が揺らめく。高く伸びた塔の上から、幾つも石を投げ込んでいた。

断片の定め

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  瞼の裏に浮かぶ光景を、微睡みの中で眺めていた。

螺旋の外

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  骨が覗いていた。無数の虫がたかり、齧っている。体液が地面に拡がり、土に沁みて。臭いが鼻腔に入り込む。

筆の先で

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  長く伸びた川が、静かに流れていた。六本の柱は、水面から空に向けて立っている。

積まれた煉瓦

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   橙色の煉瓦が積まれる。長く、高く。端を丁寧に合わせながら、ゆっくりと重ねて。

枯葉と砂

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   風が顔を執拗に撫でる。瞬きの隙間を縫って、瞳に砂が吸い込まれた。

線の先は

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  丸い輪を型どる電灯が、瞳に景色を流し込む。天井に向けた目を瞬かせ、寝そべっていた。

越えた後

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   天井に吊られた玩具の馬。三匹、佇んでいた。緋色の陽光が入り込み、部屋を暖かく照らす。

シリアルを咀嚼して

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  ──見つけた。   笑みを張り付けた顔が、ロッカーに設けられた隙間を覗きこむ。目が、合った。

街の跡

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  小さな黄色い傘をさしながら、濡れた路面を歩いていた。灰色の雲が白くなる。降り注ぐ温かい光。湿った空気を乾かして。

旋回する夜

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  羽音を鳴らして、探していた。吐き出された息に導かれ、湿った肌の上で軽く跳ねた。

羅列の果て

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  二つの数字が数多にある。羅列され、形を変えて。崩れて、また数字に──戻っても、現れてもなく。

閉じた瞼

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  水滴が集まり、形成された分厚い膜。その隙間から覗く、満ち足りた白色に輝く球体。眼差しの先を引き寄せる。

瓦礫の理由

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  黒い空が赤く明滅する。幾度も瞬き、筋を刻む。地面が揺れ、地割れが起き、瓦礫が浮いて、陥没した。

配慮の有無

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  薄暗く、狭い部屋に満たされていた。己の汚物の臭いが。仕切りのない便器と、薄い布団が敷かれた寝具。

銀の牢獄

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 鉱脈に滑り込む先端。穿ち、突き刺す。硬質な響きを耳に残して。零れ落ちた欠片が床を跳ねる。

重なる瘡蓋

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    ──剥がれる。  覆っていた瘡蓋が。積み重ね、膨らませたから。滲み、紅を滴らせて。

見えない顔

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 電灯が部屋を明るく照らす。キーを叩く軽い音。時折止まる。一点を凝視し、小さく呟く。溜め息を重ねて。

神木の瞳

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 色褪せた刃が幹に食い込む。枝がしなり、葉が揺れて。澄んだ音が響き、乾いた欠片が散らばる。

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 雑草が生い茂る。歪な楕円を避け、一面に。 下で蠢く虫が、土に潜る。石は、動かない。

最後の理性

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 煙草に火を灯した。息を吸い込み、静かに吐き出す。煙に混ざる風が顔に触れる。終業を告げるチャイムが鳴り、校舎から人が溢れた。

刹那の輪廻

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  瞬刻の目覚め。刺激され、吐き出した。羅列する文字を。従い、組み合わせただけで。最後の一行を、書き終える。

月光に照らされて

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 引き摺っていた。跡を残しながら。湿った音がする。柔らかい土に、靴底が沈んで。木々がざわめき、枝がしなる。

重なる景色

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 飛び跳ねて、水溜りを避けた。緋色の雲間から注がれる、暖かい温度。立ち止まり、水面を眺めて。

境界の先で

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 乾いた音が鳴り続けた。途絶え、硝煙が昇る。視界がぶれ、崩れ落ちて。血液が溢れ、伝い、流れる。

いやし

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 長い立髪がしなだれていた。前脚を前に出し、腹を地に着けて。浮き出た肋骨が皮膚を押し出す。体幹が崩れ、倒れた。

寄り添う枯葉

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 エレベーターの扉が開く。人がひしめき合う中で、次々と降りる。俯いた男が、あとに掃き出された。胸を、ぎゅっと握って。

編まれゆく造形

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 花弁が散り、弧を描く。つむじを巻いた、風。揺れて踊る。辿りながら。

ずれた距離

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 テーブルの下で両手を合わせた。ぎゅっと握り、爪が食い込む。椅子を前後に揺らせながら。

鼓動の燈

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 水滴が集まり、結晶に編込まれた。空一面を遮り、灰が塗り潰す。  冷たい風が大地に沁み込む。巡り、硬く。  宙を覆う厚い膜。抜けて光を届けた。  薄く、淡く──僅かに。  幾度も沈み、昇る。白が拡がっていく。  千切れ、漂う。  膜はもういない。光を浴びせた。  濃く、強く──確かに。  芽吹く緑。強張りを溶かして。  ────熱が躍動を促す。溢れるほどに。

連鎖の眼

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   緋く巨大な炎が、光を放つ。無数の陥没した跡が目立つ、球体へ。

硝子の音

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  白点が近づく。黒点に引き寄せられて。細く、長く、伸びる。環を描き、吸い込まれた。

刻まれた断片

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  寝そべったまま手を眺める。腕、甲、指。順番に視線を這わせて。深く刻まれた、皺。

剥製

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 笑い声が響く。子供がはしゃいで。食卓で料理を摘んでいた。妻と娘が食事を済ませ、遊びはじめる。それを横目に視線を戻す。

嘘の果実

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  叱責の声が響く。幾つもの電灯に照らされた、明るい部屋。項垂れて、自分の影を見つめていた。

チャンネル

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 目尻から流れる。頬を伝い、零れて。テーブルの端に水滴が広がる。画面が揺れていた。