作品アーカイブ (目次)

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重なる景色



 飛び跳ねて、水溜りを避けた。緋色の雲間から注がれる、暖かい温度。立ち止まり、水面を眺めて。

 子供がいた。麦わら帽子を被った、少年。しゃがんで、覗き込む。


 同じように、覗き込む。


 突風が頭を掠めた。鍔を押し上げ、浮き上がり、回転する。二つ、飛んでいく。目で追いかけ、呟いた。


「君の帽子も、なくなったね」


 語りかけた。僕が、同じように。太陽と水面が映す。


 視線が合う。

 瞳の中に、沢山の僕がいた。


 ──帽子、幾つあるんだろう?


 遠くから呼ばれた。近付く足音に振り返る。


「汚れちゃったね」


 濡れた麦わらを差し出された。


 アスファルトの匂いがする。水と、太陽の匂いが。頭に被せた。


 私と同時に。


 手を繋いで前を向く。


 ────二つの影。重なり、伸びて。

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