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4月, 2026の投稿を表示しています

作品アーカイブ (目次)

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  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「歪んだ花」         境界   「編まれた柱」       循環 「消えていく顔」      断片 「錯覚のまま」       断片 「ただ、純粋に」       価値観  ─ピックアップ─ テーマ   万有 「10^-10^50の虚構」                  ─テーマ別─ ─境界─           十八作品 ─時間─               七作品 ─循環─           十七作品 ─感情─           十四作品 ─万有─               八作品 ─価値観─       十七作品 ─日常─           十一作品 ─断片─               八 作品 ─無─                   三作品 ─掌編─    「歪んだ花」         境界 「消えていく顔」       断片 「錯覚のまま」        断片 「ただ、純粋に」       価値観 「選べるなら」        断片 「種の中で」         循環 「いない気がして」      境界 「跳ねたコイン」       価値観 「溢れた珈琲」        境界 「10^-10^50の虚構」       万有 「少女の花弁」        感情 「巡る日常」         境界 「視線と誇り」        感情 ...

種の中で

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  黄金と緑の階調が拡がっていた。風が吹く度に揺れ、色彩を塗り替える。その波に、違う色が混ざっていた。  一輪、咲いて。  花弁に蝶が乗っていた。口吻を差し込み、吸い込む。僅かに羽ばたき、暫く留まる。  満たされた身体。触角が上下に動く。脚で蹴り、桃色がしなる。  鱗粉が舞い──飛翔した。  宙を静かに進んでいく。複眼が映す、数多の景色が切り替わって。脚に付いた種子が零れる。    揺蕩い、ゆっくりと落下した。  黒土が敷かれた地面に。    遮るものがない蒼空。強烈な陽光が水面を照らしていた。    蒸気が昇り、  集まり、  固まる。  白く浮いたそれは風に運ばれ、流れていく。  連なり、暗く、重くなる。  ──ほどけ落ちて。  粒が、種子に跳ねた。土を湿らせ、潜りこむ。無数に降り注ぎ、深く沈めた。  巨大な灰色が萎んでいく。  空が。  蒼く、茜に──闇へ。  幾度も。  繰り返して。  咲き誇る花を、複眼が数多に映す。鱗粉が舞い、六本の脚が踏んだ。  ────桃色が、しなる。

いない気がして

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  アルバムの中で笑っていた。分厚いページを捲る度に、子供の笑顔が目に入る。紙の擦れる音と共に、少しずつ身体が大きくなって。  棚の上に、視線を移した。  額縁の少年と目が合う。微笑み返して、顔を伏せた。開いたアルバムがぼやけて見える。人差し指で瞼の下を拭い、息を吐いた。  冷水筒に手を伸ばし、硝子のコップに注ぐ。  静かな部屋に、波打つ音が響いた。  縁を唇に当て、喉に流す。   テーブルに硬い音が鳴り、水面が揺らぐ。  アルバムに手を触れて、写真を見つめた。   輪郭をなぞり、口から零れ出る。 「此処にいるね」   掌を胸に当て、額縁に視線を向けて。  ────確かに、笑っていた。

跳ねたコイン

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   目を伏せて掌を擦る。前に置いた空き缶を凝視して。コンクリートの地面が臀部を冷やす。手の皮膚が乾き、ひび割れていた。裂けた傷に沿って紅く滲む。  硬く、澄んだ音がした。  顔を上げ、頭を下げる。通り過ぎた背中を見つめた。行きかう人々。皆、視線を前に向けている。  俯き、空き缶を覗く。コインが一枚入っていた。息を吸いこみ、溜息を吐く。周囲に視線を巡らし、喧騒を眺めた。    緋色に染まった街並みを、暗闇が覆っていく。街灯が点灯し、羽虫が群がって。電灯にぶつかる音を聞きながら、静かに腰を上げる。腕を伸ばし、空き缶を掴んだ。 「ずっとそこに座ってたね。何で?」  顔を上げると、少年と目が合った。暫く沈黙し、目を反らす。俯いて歩き出した。足音が背後から聞こえる。速足で進んだ。  交互に鳴る、二人の靴音。立ち止まり、振り返った。 「付いてくるな」 「無視するからだよ。ねぇ、何で?」  にこにこと笑う少年を睨みつけ、舌打ちする。 「金が貰えるからだ。これで満足か?」 「働いたらいいのに」  紅潮した顔が熱で火照る。目の前の子供が笑っていた。目を伏せて地面を見る。舗装された道が、滲む。  零れ落ちた連なる滴り。路面を濡らし、嗚咽が漏れる。  遠くで雑談が聞こえた。 「何で泣いてるの?」  目を見開き、顔を見る。胸倉を掴み、叫んでいた。  少年はにこにこと笑う。  前から歩いて来た男と女が、首を傾げて通り過ぎる。  ────コインが一枚、地面に跳ねた。

溢れた珈琲

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   瞼が降りてくる。首を振って目を見開いた。机に置いてあるモニターを眺めていたが、段々頭が下がって来る。閉じた口が自然に開き、欠伸が漏れた。   マグカップに手を伸ばす。冷えた黒い液体が縁で揺れ、表面を伝って机に零れた。書類を濡らし、染みが広がる。珈琲の香りが漂う。唇でカップに触れ、喉を何度か鳴らした。  対面の席から咳払いが聞こえる。顔を向けると、目が合った。同僚が視線を泳がし、顎をしゃくる。その先で、上司が天井を見つめていた。口を開けたまま、小刻みに震えて。  クロスに黒い染みが滲んでいた。下に向かって盛り上がり、零れ落ちる。  ──液体が、床で跳ねた。  上司の足元に絡みつく。ゆっくりと這い上がり、身体を包み込んだ。叫び声が部屋に響く。 「何だあれ」    呟いて、立ち上がる。同僚がドアの方向に駆け出した。 その背中から視線を外し、周囲を見渡す。  座ったまま、その光景を眺める人。  転んで這いつくばる人。  黒い、塊。  蠢いている。一回り大きくなって。  苦い香りが充満している。    ────書類の染みが、消えていた。

10^-10^50の虚構

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    空間に形成される。柔らかく、幾つもの皺が複雑に編まれた存在が。真空に拡がる暗い世界で、瞬く光点に囲まれていた。  表面の桃色の奥に、電気信号が走り続ける。  散らばる断片を並べ、組み上げていく。 ────   妻と寄り添い、脚を伸ばして座っていた。星が煌めく夜空を眺めながら、顎髭をさする。隣に顔を向け、視線を交わす。腕を背中に回し、細い身体を掴んだ。掌に伝わる、温かい脈動。  頭を肩に乗せて微笑む妻。口を開き、静かに呟いた。その言葉に頷き、妻の大きな腹に触れる。  冷たい風が通り抜け、頬を撫でていく。上着を脱いで妻に羽織り、立ち上がる。差し伸べた手が握られた。引き起こし、臀部をはたく。草を踏みしめ、並んで歩いた。  足下が揺れ──地鳴りが響く。  バランスを崩した妻を抱え、その場に伏せる。ひび割れが迫り、崩れ、飲み込まれた。  叫び声が耳を突き刺す。音の濁流に搔き消され、視界が赤く染まる。暗闇に覆われ、閉じていく。 ────  真空を漂っていた。桃色の、複雑に編まれた存在が。ばらばらにほどけ、霧散する。  ──静寂が続く。    幾つかの光点が弾け、また産まれて。  繰り返し、  何度も。  また──    粒子が、集まっていた。  ────揺らぎ、形成されて。      

少女の花弁

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   夕暮れに染まる景色の下で、女と少女が手を繋いでいた。時折、顔を見合わせて。二人の影が伸びていく。  揺らぎ、滲む。  小さな手に花が一輪、握られている。笑みを浮かべて眺めていた。薄い花弁が、風に揺れる。  一枚、千切れ──宙に舞う。  緋に照らされた桃色。  地面に映す黒色。  互いに追いかけ、弧を描いた。  欠けた花を指差し、唇を尖らせて女の顔を見つめる。頷いて、静かに屈む。目線を合わせて微笑み、頭を撫でた。  手から零れ落ちていく。地面を弾み、横たわる。桃色の、欠けた花。  女の指が茎を摘まみ、胸に抱いた。  影が重なり、一つになる。  花弁が一枚、空に向かって弧を描く。  暖かい匂いが髪に触れた。  ────女と花が、手を繋いで。

巡る日常

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 巨大な球が置いてある。公園を埋め尽くしていた。ブランコや滑り台は見当たらない。ただ、それだけがある。  近付いて触れてみた。しっとりと、湿っている。指を引いて少し離れた。目を細め、じっと眺める。薄い靄に包まれているが、その奥に茶色と青が斑にある。  腕を組んで首を傾げた。頷いて、大きく息を吸う。鼻を摘まみ、瞼を閉じて。  頭を突っ込んだ。  ひんやりと肌を撫でる風。髪が雲を散らし、僅かに濡れる。目を開くと、視界に海が拡がっていた。大きな陸地の隣に、小さな島の連なりが見える。眼を凝らして覗き込む。  沢山の人が見上げながら指差していた。何か叫んでいる。聞き取ろうと、耳を澄ませて体を乗り出した。  球体が膨張し──弾けた。  残響の中で霧散する。公園にはブランコと滑り台があった。ざわめきが聞こえ、辺りを見回す。沢山の人が集まっていた。皆、空を指差して。  ゆっくりと視線を辿る。  軽い音が鳴り──弾けた。  ────公園に、巨大な球が置いてある。