作品アーカイブ (目次)

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いない気がして



 アルバムの中で笑っていた。分厚いページを捲る度に、子供の笑顔が目に入る。⁠紙の擦れる音と共に、少しずつ身体が大きくなって。

 棚の上に、視線を移した。

 額縁の少年と目が合う。微笑み返して、顔を伏せた。開いたアルバムがぼやけて見える。人差し指で瞼の下を拭い、息を吐いた。

 冷水筒に手を伸ばし、硝子のコップに注ぐ。

 静かな部屋に、波打つ音が響いた。


 縁を唇に当て、喉に流す。

 テーブルに硬い音が鳴り、水面が揺らぐ。

 アルバムに手を触れて、写真を見つめた。


 輪郭をなぞり、口から零れ出る。


「此処にいるね」


 掌を胸に当て、額縁に視線を向けて。


 ────確かに、笑っていた。

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