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囁きの中

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   絶壁があった。頭を振り、手を伸ばして指で触れる。少しなぞり、掌を開けた。

映された背中

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    遮断機が降りて、規則正しく音が鳴る。敷かれた鉄が振動し、響き出す。

記述先の違い

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  咳が聞こえた。皆、一様に視線を向ける。直ぐに顔を伏せ、紙を摘まんだ。

届かない声

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   飛沫を残して沈んでいく。  波紋が拡がり、細かい泡が幾つも生まれた。

決められた中で

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   二つのグラスがテーブルに並んでいた。  赤と、青。

眼球の奥

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   瞼を透かして眼球に届く。朦朧とした頭を振り、目を開いた。

写実した風景

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   風を正面に浴びながら、木を見つめている。枝がしなり、揺れていた。生い茂る緑葉が幾つか運ばれて。

同じ場所で

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   レンズ越しに宙を眺める。近付くことが出来た。行けるはずもない場所に。届く光を追うことで網膜に焼き付く。

無機物の渇望

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   反射して表面を映す。その像に中身はない。光で照らせば、すぐに創れるのに。

歪んだ花

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    サイレンが街を包んでいた。叫びはもう、聞こえてこない。

いない気がして

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  アルバムの中で笑っていた。分厚いページを捲る度に、子供の笑顔が目に入る。

溢れた珈琲

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   瞼が降りてくる。首を振って目を見開いた。机に置いてあるモニターを眺めていたが、段々頭が下がって来る。

巡る日常

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 巨大な球が置いてある。公園を埋め尽くしていた。ブランコや滑り台は見当たらない。

筆の先で

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  長く伸びた川が、静かに流れていた。六本の柱は、水面から空に向けて立っている。

線の先は

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  丸い輪を型どる電灯が、瞳に景色を流し込む。天井に向けた目を瞬かせ、寝そべっていた。

越えた後

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   天井に吊られた玩具の馬。三匹、佇んでいた。緋色の陽光が入り込み、部屋を暖かく照らす。

閉じた瞼

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  水滴が集まり、形成された分厚い膜。その隙間から覗く、満ち足りた白色に輝く球体。眼差しの先を引き寄せる。

瓦礫の理由

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  黒い空が赤く明滅する。幾度も瞬き、筋を刻む。地面が揺れ、地割れが起き、瓦礫が浮いて、陥没した。

銀の牢獄

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 鉱脈に滑り込む先端。穿ち、突き刺す。硬質な響きを耳に残して。零れ落ちた欠片が床を跳ねる。

重なる瘡蓋

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    ──剥がれる。  覆っていた瘡蓋が。積み重ね、膨らませたから。滲み、紅を滴らせて。