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嘘の果実



叱責の声が響く。幾つもの電灯に照らされた、明るい部屋。項垂れて、自分の影を見つめていた。


冷たく、鋭利な言葉。大勢の無表情。醒めた眼差しが、男を射抜く。キーボードを叩く音が、止んでいた。


握った拳に、汗が滲む。顔が熱い。鼓動が、頭に鳴り続ける。乾いた唇を舐め、口を開いた。


「確かに、渡した。覚えているでしょう?」


「......俺が、なくしたと言いたいのか?」


周囲を見渡し、視線を落とす。視界が、滲む。

上司が溜め息を吐いた。デスクに戻り、椅子に座る。しばらく睨んだあと、手を横に振った。


俯き、ゆっくりと歩き出す。皆、視線を合わせない。自席に座ると、顔が緩んだ。両頬を挟むように叩く。


鞄にしまった、分厚い封筒。


───隙間から、そっと撫でた。

コメント

  1. コメント失礼します。
    第三者として読めば、
    誰が正しく、誰が誤っているのかは分からないはずなのに、
    気づけば視線が一方へ寄せられている感覚がありました。
    真実そのものよりも、
    立場や配置によって先に結論が形づくられてしまう。
    その空気の怖さを描いているようにも感じます。

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  2. コメントをありがとうございます。
    先入観は働きやすいので、決めつけなどは現実でよくあることで、仰る通り、立ち位置も絡みますよね。
    丁寧に読んでいただいて、感謝いたします。ありがとうございました。

    返信削除

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