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最後の理性



煙草に火を灯した。息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。煙と混ざる風が、顔にかかる。終業を告げるチャイムが鳴り、校舎から人が溢れた。

木にもたれかかり、雑踏を眺める。行き交う学生が、忙しなく歩いて。


錆色のコートを翻す。波打つ、ブロンドの髪。ポケットを探ると、指先に触れる。硬く、冷たい物が。


──こうするしか。


煙草を咥え、目を閉じた。タールが肺に沁み、馴染む。煙を、吐き出して。



───

壁の亀裂が目立つ、薄暗い部屋。紫煙が漂う。

灰皿に押し付け、吹きかける。錆色のコートを着た男に。


「......後悔するぞ。」


瞳を覗き、紡いだ。錆色のコートは、ほつれていく。


「うるさい。邪魔だ。」


ブロンドが、揺れる。ポケットから取り出した。黒く、鈍い光沢を。冷たく、硬い物を。


「......もう、必要ない。」


指を、引き絞る。腕に余韻を残し、男を貫く。吐き出され、零れ落ちた──床を、跳ねて。


錆色のコートはほつれ、ほどける。ブロンドと共に。霧散する。硝煙を残して。



───

路面を跳ねる、薬莢の音。耳鳴りが頭蓋に反響する。何も聞こえない。


硝煙の匂いが、した。


女が、目を見開く。弾丸が女を貫いていた。ゆっくりと崩れ、うつ伏せに倒れた。赤黒く滲む染みが、地面を汚す。


「お前らは、俺を見ないんだろう?」


群れが、散る。逃げる背中を追い続けた。


始業を告げる、チャイムが響く。

誰にも、聞こえない。


髪が一本、抜け落ちた。陽光に輝く、ブロンドが。


────錆色のコートが、僅かに揺れて。風が、止む。

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