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剥製



 笑い声が響く。子供がはしゃいで。食卓で料理を摘んでいた。妻と娘が食事を済ませ、遊びはじめる。それを横目に視線を戻す。

 大きなテレビ画面。映った部屋には、鹿の剥製が飾られている。眺めながらグラスを掴んだ。波打つ、白く透明な液体。ワインの香りが鼻腔に届いた。


 皿の上に蟹の胴体。脚は全てもぎ取られ、胴の前面がくり抜かれていた。詰まった身に箸を伸ばす。口に入れて、咀嚼する。繰り返し、摘んだ。殻に付いた眼がその度に揺れる。白く、濁って。


 肉とワインが混ざり、喉を滑る。甘みを苦味が包み込む。空っぽになった、蟹。気付いた妻が盆に乗せる。娘が覗き込んで、目を輝かせた。


「この蟹、可愛い。ちょうだい!」


「駄目だよ。汚い。捨てるんだから」

 

 妻が答えると、娘が蟹を掴んだ。台所に向かう。蛇口を捻り、丁寧に洗っている。タオルに乗せ、ゆっくりと戻って来た。


「綺麗だよ。これならいいでしょ?」


 妻と視線が合う。沈黙を、漂わせて。

 蟹の眼──鹿の、黒い瞳。


 ────剥製を見つめていた。白く、濁って。



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