作品アーカイブ (目次)

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錯覚のまま



 記憶を辿って言葉を交わす。何度も見た、同じ顔と。僅かにズレて。

 帳が降りて食事をし、身体を洗う。横たわり、意識を失う。空が暗闇に染まる頃に、毎日繰り返された。


 細胞が震え──入れ替わる。

 気付かぬままに。


 寝息に誘われ、羽音が近付く。静寂の中で高く響いている。別の夜にも鳴っていた。


 区別は、つかない。


 日差しが瞼を覆う。痕が残る腕を擦り、半身を起こす。細めた目で窓を見つめた。


 立ち上がり、ハンガーに手を掛ける。袖を通して玄関に向かった。


 見慣れた顔が見送る。浅い皺が一本、刻まれていた。手を振り返したあと、ノブを掴む。ゆっくりとドアが軋んだ。


 同じ場所に向かう。


 ────髭が少し、伸びた顔で。

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