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神木の瞳


 色褪せた刃が幹に食い込む。枝がしなり、葉が揺れて。澄んだ音が響き、乾いた欠片が散らばる。柄を持つ手が湿り、僅かに滑った。斧を地に立て、額を拭う。

 囀りを繰り返していた鳥。枝を蹴って羽ばたいた。目で追いながら両手で握り直す。振りかぶり、力を込めて。繋がりを、断つ。


 ──葉が、ざわめいた。


 ゆっくりと折れていく。湿り気を帯びた、裂かれる音。横たわり、地面を抉った。樹木の上で鳥が囀る。黒い瞳が覗いていた。土に沈む、注連縄を映して。


 視線を交わし、笑みを浮かべる。斧を投げ捨て、口を開く。


「役目が終わったんだ」


 鳥を見つめ、紡いだ。


「......ありがとう」


 切り株に向き直り、年輪を認めた。

注連縄を拾い、付いた泥を丁寧に拭う。


 斧を掴んで歩き出す。


 囀りは聞こえない。冷たい風が葉を撫でた。ざわめきだけが、残されて。


 ────黒い瞳が見つめている。男の背中を。

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