作品アーカイブ (目次)

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  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「無機物の渇望」      境界 「歪んだ花」         境界   「編まれた柱」       循環 「消えていく顔」      断片 「錯覚のまま」       断片 ─ピックアップ─ テーマ   万有 「10^-10^50の虚構」                  ─テーマ別─ ─境界─           十九作品 ─時間─               七作品 ─循環─           十七作品 ─感情─           十四作品 ─万有─               八作品 ─価値観─       十七作品 ─日常─           十一作品 ─断片─               八 作品 ─無─                   三作品 ─掌編─    「無機物の渇望」       境界 「歪んだ花」         境界 「消えていく顔」       断片 「錯覚のまま」        断片 「ただ、純粋に」       価値観 「選べるなら」        断片 「種の中で」         循環 「いない気がして」      境界 「跳ねたコイン」       価値観 「溢れた珈琲」        境界 「10^-10^50の虚構」       万有 「少女の花弁」        感情 「巡る日常」         境界 「視線...

ずれた距離



 テーブルの下で両手を合わせた。ぎゅっと握り、爪が食い込む。椅子を前後に揺らせながら。針がつられる。壊れた時計の奥で。


 顔を上げると母が瞳を覗き込む。腰に手を当て、動こうとしない。


「言うことがあるんじゃない?」


 俯いて口を尖らせた。紅くなった頬が膨らむ。握った手から、擦れる音がした。


 風が流れる。カーテンと髪を撫でて。母は溜め息を吐いた。テーブルを挟んだ椅子。背もたれを掴んで、引く。


 ゆっくりと座り、テーブルに両肘を乗せる。

眉間に皺を寄せて。視線は、硬く。


 受け止めて、大きく息を吸い込む。


「......僕じゃない」


 両手を机に乗せた。机が軋む。壊れた時計が、傾いて。


 母は視線を逸らせた。

 車が走る音が近づき──遠ざかる。

 横目で窓を見て、向き直った。僕は掠れた声を絞り出す。


「言うこと、ないの?」


 母が目を細める。小さな声で言葉を紡いだ。


「......ごめんね」


 外から笑い声が響く。

 僕が、瞳を覗いていた。鼻から息を吸い込み、吐き出して。


 席を立ってドアに向かう。ノブを掴み、振り返った。


 ────ポケットのネジが、鈍く響いた。



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