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風

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   根を張り巡らせた、太い幹。伸ばした枝がたわみ、先端の葉が揺れる。上に、下に。

蝉に向けて

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 幹にしがみつき、腹を震わせ響かせる。呼応して連なり、音が膨らんだ。立ち並ぶ木々に反響し、街を包む。

結晶を痕に

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   灰色が沁みた膜が漂っていた。流れ、形を変えて。繋がり続けて覆い隠す。

届かない声

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   飛沫を残して沈んでいく。  波紋が拡がり、細かい泡が幾つも生まれた。

自然治癒

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   照射する光が熱を帯びて、水面を温めていた。形を保てず、蒸気に変化し上昇する。冷やされ、固まり、雲となった。

決められた中で

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   二つのグラスがテーブルに並んでいた。  赤と、青。

残火の跡

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   燃え盛る巨大な炎が、熱を帯びた視線を放つ。  周囲に集う連なり──八の色彩へ。

戦場の欠片

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    滲む視界の先で、男が笑っている。その脚が小さな身体を踏んでいた。

零れたのは

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   ちゃぶ台の前で膝を折り、畳に脛を置く。背筋を伸ばし、卓上の茶碗を見つめて。急須に手を伸ばし、注いでいく。

生まれた世界で

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 眼球が土に根を張り巡らせている。  瞼は、ない。

アート

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   回廊の白い壁に視線を向ける。幾つもの絵画が掛けられ、並んでいた。人々は眉を顰め、頷き、腕を組む。

眼球の奥

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   瞼を透かして眼球に届く。朦朧とした頭を振り、目を開いた。

真実の景色

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    太陽が降り注ぎ、眼球を照らした。入ることは出来ない。視界には無が拡がっている。

聞こえぬ組曲

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 何処かで鳴っている。震わせながら伝って来た。  生地が僅かに振動を始める。

跡を残して

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   砂を掬って拾い上げた。熱を纏い、体温と混ざる。掌で流れ、指の隙間を滑り落ちて。

飛び去る欠片

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   樹皮に刻み、横臥した。視界は闇に塗られ、耳鳴りが途切れる。皮下で一粒、微細に震えて。

淵の端から

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   草を握って力を込めた。土が盛り上がり、跳ねて散らす。背負った籠に手を伸ばして、指を離した。少し、積みあがる。

写実した風景

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   風を正面に浴びながら、木を見つめている。枝がしなり、揺れていた。生い茂る緑葉が幾つか運ばれて。

同じ場所で

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   レンズ越しに宙を眺める。近付くことが出来た。行けるはずもない場所に。届く光を追うことで網膜に焼き付く。

無機物の渇望

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   反射して表面を映す。その像に中身はない。光で照らせば、すぐに創れるのに。

歪んだ花

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    サイレンが街を包んでいた。叫びはもう、聞こえてこない。

編まれた柱

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 雪と雨が降っていた。選ぶことをしないで。  土に結晶が重なり、水滴が崩す。

消えていく顔

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 女の顔が紅潮していた。唾を飛ばし、捲し立てて。対面に座る、その視線を受け止める男。顎髭を撫で、静かに紡いだ。

錯覚のまま

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  記憶を辿って言葉を交わす。何度も見た、同じ顔と。僅かにズレて。

ただ、純粋に

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   一人、ベンチに腰掛けていた。ほつれた服の袖から覗く手は、黒く汚れている。膝に置いた袋を弄り、パンを掴んだ。

選べるなら

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  淡い橙色の液に浸され、形成していた。透明な皿に乗せられ、線を刺し込まれる。

確かな存在

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  細い管先を泡立つ液に浸し、口に咥えた。鼻から空気を吸いこみ、ゆっくりと吐き出す。

種の中で

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  黄金と緑の階調が拡がっていた。風が吹く度に揺れ、色彩を塗り替える。その波に、違う色が混ざっていた。

いない気がして

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  アルバムの中で笑っていた。分厚いページを捲る度に、子供の笑顔が目に入る。

跳ねたコイン

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   目を伏せて掌を擦る。前に置いた空き缶を凝視して。コンクリートの地面が臀部を冷やす。

溢れた珈琲

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   瞼が降りてくる。首を振って目を見開いた。机に置いてあるモニターを眺めていたが、段々頭が下がって来る。

10^-10^50の虚構

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    空間に形成される。柔らかく、幾つもの皺が複雑に編まれた存在が。

少女の花弁

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   夕暮れに染まる景色の下で、女と少女が手を繋いでいた。時折、顔を見合わせて。

巡る日常

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 巨大な球が置いてある。公園を埋め尽くしていた。ブランコや滑り台は見当たらない。

視線と誇り

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  視線が注がれていた。身体が僅かに強張る。小さく息を吐いた。唇を舐め、引き結ぶ。

何処へ向けて

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   垂れ下がる太い綱を握り、何度か振る。大きな鈴が鈍い音を鳴らした。両手を合わせて目を閉じる。

手放した石

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   拡く波打つ海が揺らめく。高く伸びた塔の上から、幾つも石を投げ込んでいた。

断片の定め

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  瞼の裏に浮かぶ光景を、微睡みの中で眺めていた。

螺旋の外

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  骨が覗いていた。無数の虫がたかり、齧っている。体液が地面に拡がり、土に沁みて。臭いが鼻腔に入り込む。

筆の先で

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  長く伸びた川が、静かに流れていた。六本の柱は、水面から空に向けて立っている。

積まれた煉瓦

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   橙色の煉瓦が積まれる。長く、高く。端を丁寧に合わせながら、ゆっくりと重ねて。

枯葉と砂

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   風が顔を執拗に撫でる。瞬きの隙間を縫って、瞳に砂が吸い込まれた。

線の先は

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  丸い輪を型どる電灯が、瞳に景色を流し込む。天井に向けた目を瞬かせ、寝そべっていた。

越えた後

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   天井に吊られた玩具の馬。三匹、佇んでいた。緋色の陽光が入り込み、部屋を暖かく照らす。

シリアルを咀嚼して

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  ──見つけた。   笑みを張り付けた顔が、ロッカーに設けられた隙間を覗きこむ。目が、合った。

街の跡

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  小さな黄色い傘をさしながら、濡れた路面を歩いていた。灰色の雲が白くなる。降り注ぐ温かい光。湿った空気を乾かして。

旋回する夜

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  羽音を鳴らして、探していた。吐き出された息に導かれ、湿った肌の上で軽く跳ねた。

羅列の果て

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  二つの数字が数多にある。羅列され、形を変えて。崩れて、また数字に──戻っても、現れてもなく。

閉じた瞼

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  水滴が集まり、形成された分厚い膜。その隙間から覗く、満ち足りた白色に輝く球体。眼差しの先を引き寄せる。

瓦礫の理由

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  黒い空が赤く明滅する。幾度も瞬き、筋を刻む。地面が揺れ、地割れが起き、瓦礫が浮いて、陥没した。