作品アーカイブ (目次)

イメージ
更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。

蝉に向けて



 幹にしがみつき、腹を震わせ響かせる。呼応して連なり、音が膨らんだ。立ち並ぶ木々に反響し、街を包む。

 小さく、混ざる。

 枝が絡む、塞いだ窓の隙間を縫って。


 湿った畳に仰向けでいた。唇は裂け、肌は乾いている。充血した眼が明滅する蛍光灯を映していた。周囲に菓子箱が散らばり、ペットボトルが転がっている。


 尻の下は茶色に滲み、色を変えていた。短い指を動かし、伸びた爪で畳を掻く。褪せた黄色いシャツに皺が寄り、描かれたヒーローが歪んだ。


 外から伝い、耳に届く。聞いたことのある高い声。皆、笑い合っている。残響を残し、ゆっくり遠ざかっていく。


 喉を鳴らし、口から零れた。かすれ、しゃがれた音が。


 瞼が、降りる。


 ドアの前で女が手を振っていた。微笑みながらノブを掴む。重く軋んだ鉄が響いて。


 しがみついた脚が外れた。

 腹を震わせ、地に向かう。


 ────混ざることは、ない。

コメント

このブログの人気の投稿