作品アーカイブ (目次)

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零れたのは

 


 ちゃぶ台の前で膝を折り、畳に脛を置く。背筋を伸ばし、卓上の茶碗を見つめて。急須に手を伸ばし、注いでいく。

 蒸気が、視界を遮る。

 

 満たされた器に指先で触れ、直ぐに引いた。色褪せた布を巻いて両手で掴む。ゆっくりと持ち上げて、息を吹き付ける。木目に残した滴りが円を繋ぐ。それを眺め、啜った。


 口に含み、転がし、喉を鳴らす。

 縁から溢れた雫が甲を滑り、指が開いた。


 落下する。


 透き通る緑。

 宙に拡がり──うねる。

 

 茶碗の周囲を廻り続けて。


 重く音を沈めた。

 畳に沁みる、苦みを噛む。


 天井を見上げ、息を吐いた。


 ────褪せた橙が、染みを擦る。

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