作品アーカイブ (目次)

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零れた塵

 


 吊り革を眺めていた。横並びに座り、時折肩が触れる。

 隣で摘む菓子の匂い。

 眉を顰め、俯いた。


 圧縮された空気が抜ける音。扉が開き、人々は吐き出されていく。


 入れ替わり、また埋まる。

 アナウンスとベルが交錯して。


 地響きと振動は、身体を細かく揺らしていた。


 流れていく景色。

 窓は直ぐに黒く染まる。


 規則正しい音が刻まれていた。

 身体を預け、微睡に任せる。



────

 眼前の微笑み。

 口元を緩め、手を伸ばした。


 柔らかい髪。

 小さな頭に指を這わせる。


 膝に乗せて、両手で頬を包んだ。

 菓子の匂いが、漂う。


 じっと見つめる。

 ぼやけ、定まらない。


 崩れて──塵に。


 掻き集め、握り締めた。

 視界が滲む。



────

 アナウンスとベルが交錯する。

 瞼を開き、握り締めた手を見つめた。


 扉の前に人が並ぶ。

 一人、座っていた。


 圧縮された空気が抜ける。

 静かに、開いた。


 湿った掌には、何もない。


 ────ただ、吐き出されていく。

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