作品アーカイブ (目次)

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蒼を抜けて

 


 匂いがする。顔を向けて鼻を膨らませた。脚を前に踏み出し、辿り始める。


 舗装された道は橙色を伸ばしていた。陽が反射して地面を白く見せている。


 目を細め、手を翳す。

 額を拭うと袖が湿った。


 歩き続ける。


 匂いは濃く、強くなっていく。

 左側に立ち並ぶ、建物の一つから漂う。


 入口の前に置かれていた。


 行き交う人々が鼻を摘み、顔を顰めている。擦れ違う際に肩が触れた。その人物は立ち止まり、周囲を見回している。


 一瞥して歩み続けた。脚を止め、建物を見上げる。ゆっくりと視線を落とす。


 蒼い、大きな箱。


 黒い液体が縁まで注がれていた。

 中を覗く。


 瞬く粒が散らばり、幾つかの渦を巻いていた。


 淵を掴んで頭から浸かる。逆さになり、身体を沈めて。僅かに飛沫を上げて、波紋を残した。



────

 傍に佇む人が蹲る。

 目尻から頬をなぞる、痕。

 震える指を開き、花を置いた。


 掌を合わせて。


 ────白檀の香が、漂っている。

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