作品アーカイブ (目次)

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牢獄の外


 花を千切り、髪を飾る。残された茎が揺れていた。微笑みと断面が擦れ違う。スマホを取り出し、己に向けて微笑んだ。

 乾いた音が鳴る。


 唇を結び、花弁を摘まんだ。地面に落として歩き出す。


 画面を見つめたまま、景色は流れていく。髪が湿り、垂れた雫が頬を伝った。曇天が拡がり、雨粒が顔を叩く。立ち止まって辺りを見回した。


 靴音を辿ると、行きかう人々がいる。

 頭は、ない。


 声を震わせ、後ずさる。駆け出していた。硬い音が地面で跳ね、硝子が割れる。空になった手を振り続けた。


 膝を掴み、荒い呼吸を繰り返す。

 身体が濡れていない。


 見上げると空は蒼く、雲は緩やかに流れている。


 笑声が聞こえた。

 雑談しながら通り過ぎる人たち。


 転がる残骸を一瞥して、静かに足を踏み出した。その先には茎がある。傍に横たわる、千切れた花と。


 ────牢獄の外で。

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