作品アーカイブ (目次)

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朝露を生む前に

 


 稜線に浮かぶ緋が沈んでいく。

 濃く、黒く──色を変えて。擦れ違い、昇る白光。


 立ち並ぶ樹木を淡く照らした。

 葉が揺れて、掠れた音を鳴らす。


 砂が舞い上がる。螺旋を描き、虫の声を乗せて絡み合う。


 ふと、途切れた。


 大きな足跡が深く刻まれている。傾斜の先に漂う、臭いを辿って。降る先に後脚で草を踏み締め、立ち上がる巨躯があった。


 眼前の小柄な身体に前脚を振り下ろす。肉に爪が潜り、引裂いた。喉を削がれた獣が短く息を吐く。倒れ込み、幾度か胸を上下させた。


 静かに──止まる。


 前脚を地に着け、骸に近付く。鼻を鳴らし、牙を覗かせる。口を埋め、顎を何度も動かしていた。齧り、啜る。


 咀嚼音が響く度に、体毛を紅く染めた。

 唾液に濡れた残骸は。

 白く、硬い。


 去り行く、巨体。


 茂みがしなる。

 長い尾を振り、咥えた影が。


 一つ、二つ。

 三つ。


 土に沁みる痕を残した。


 木々が囁く。葉を擦らせて。

 遠吠えは重なり、木霊する。


 ────朝露が、震えた。

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