作品アーカイブ (目次)

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霧の破片



 テレビが言葉を並べている。画面をじっと見つめる横顔を眺めていた。溜息を吐いて首を振っている。

 電源を切り、此方を向いた。口笛を吹き、片目を閉じて。

 差し出された、箱。


 両手に掴んで胸に抱えた。駆け出して、テーブルに置く。小さな手でリボンをほどき、包み紙を破いていく。


 指を止めずに、顔を上げて瞳を向けた。


 空になった太い腕を重ね、眼尻に皺を寄せている。微笑みを零し、顎に親指を添えて。


 紙の千切れる音が途絶え、笑声が響く。高く、澄んだ声。頭上に掲げた玩具を、差し込む日が緋く照らしている。


 雲は緩やかに流れていた。


────

 硝子を叩く水滴が垂れ、窓を覆っている。瞼を擦り、目を開けた。静かに頭を巡らせ、一点に留める。


 視線の先に、暗闇に浮かぶ玩具の輪郭。身体を起こし、ベッドから降りた。摺り足で近付き、そっと触れる。持ち上げて、微笑んだ。


 硝子が震えている。赤と白に、明滅して。

 途切れることなく、細かく──ずっと。


 サイレンが、聞こえる。


────

 ドアが開き、壁を鳴らした。跳ね返る前に、筋が浮き出た手に抱きかかえられる。荒い息が頭上で聞こえていた。厚い靴底が玄関を蹴破り、煙が頬を撫でる。


 腕の中で見上げると、灰色が拡がっていた。時折、朱が混ざる。溢れ落ちた数多の粒が顔を濡らす。


 街が揺れた。

 轟音が拡がり、黒煙が昇っていく。


 玩具が地面に跳ね、欠片を散らせて。大きな身体に包まれていた。両腕を交互に引き摺り、這い出ていく。立ち上がって、振り返る。


 見開いた瞳に映されていた。


 鼓動を止めた胸に顔を埋め、染みを残す。顔を歪ませ、空を見上げた。


 幾つも降り注ぐ。

 流線形の鉄塊が。


 瞼を閉じた。

 動かぬ身体を抱きしめる。


 錆の匂いが漂う中で。


 瓦礫の跡に、二つの黒い霧が佇む。

 雨粒が煤を払い、ひびをなぞった。


 ────砕けた玩具を、軋ませている。

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