作品アーカイブ (目次)

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  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「黒煙の街」        循環 「名を持つ欠片」      価値観 「選んだ涙」        価値観 「同じ顔」         感情 ─ピックアップ─   テーマ   断片 「蝉に向けて」                          ─テーマ別─ ─境界─       二十六作品 ─時間─               八作品 ─循環─       二十二作品 ─感情─       二十一 作品 ─万有─               九作品 ─価値観─       二十作品 ─日常─           十二作品 ─断片─           十二 作品 ─無─                   三作品 ─掌編─    「黒煙の街」          循環 「選んだ涙」         価値観 「同じ顔」          感情 「映された背中」       境界 「静止した時」        時間 「記述先の違い」       境界 「見つめるものは」      感情 「変わらない夜」       断片 「記憶の中で」        断片 「蝉に向けて」        断片 「決められた中で」      境界 「戦場の欠片」        感情 「零れたのは」        感情 「アート」          価値観 「眼球の奥」         境界 「飛び去る欠片」       ...

静止した時

 


 懐中時計を掌に乗せている。硝子は割れて、秒針は動いていない。懐に収め、呟く。

「待たせて、すまなかった」


 岩肌に身体を預け、谷底を見つめていた。仰向けに倒れた人影に目を細めて。反響し、吹き上がる音。白く覆われた景色に、冷たく顔を包まれた。


 腰に付けたハーネスから伸びるロープを、下に投げる。カラビナを細かく振動させ、揺れながら落下する。先端が底に触れた。


 両手で握りしめて、降りていく。グローブの摩擦が僅かに熱を灯す。爪先が岸壁を蹴る度に、欠片が飛び散る。吐いた息を眺め、額を拭った。


 小石が肩を掠めていく。見上げると、白い塊が流れ落ちていた。歯を食いしばり、腕に力を込めて俯いた。轟音が傍を滑り抜ける。身を固め、じっとしていた。地に弾け、振動が止まる。


 胸に掌を置き、鼓動を数えた。


 視線を落とし、両手に掴む。

 壁を蹴り、下っていく。


 靴底が沈んだ。荒い呼吸を整え、足跡を刻む。結晶が塞ぐ視界の先に、横たわる女を映した。近付き、膝を着く。


 皺一つない顔。己の白髪に触れ、手を伸ばした。女の右手を握り、目を閉じる。


「お前は変わらないな」

  

 唇は結ばれ、開かない。


 瞳を滲ませ、眼尻を伝う。深いほうれい線を辿る。雫は鈍く流れ、霜となって。


「俺は、お前の手を......」


 身体は強張り、硬く。

 秒針が揺れる。


 ────懐の音が、影を重ねた。

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