作品アーカイブ (目次)

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選んだ涙

 


 瞳が映し、立ち止まる。道路に猫が転がっていた。⁠三色の毛並みは乱れ、皮膚が破れている。地面の黒を濃く滲ませていた。

 頭を振り、視線を外す。


 手提げの先で袋が揺れる。中が擦れ、鈍く響いた。速足で通り過ぎる。真直ぐに、前を見つめて。


────

 ドアに鍵を差し込むと、内側から掻く音がする。微笑みを浮かべ、開いた。三毛が脚に擦り寄り、喉を鳴らす。靴を脱いで部屋に向かった。


 袋に手を入れ、缶を掴む。乱れた毛が腕に触れた。三個取り出し、積み上げる。一つを手に取り、蓋を開けた。


 三毛が皿を覗き込む。盛りつけると、乾いた鼻先を着ける。一度舐めて顔を上げ、蹲って目を閉じた。


 そっと頭を撫でる。

 硬い毛の、流れに沿って。


 息は細く。

 断続的に。


 視界は滲む。

 輪郭がぼやけ。


 手を伸ばす。

 膝に抱えて。


 見つめたまま。


 ゆっくり、強張っていく。


 ────零れ、鼻先を濡らした。

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