作品アーカイブ (目次)

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最後の理性



 煙草に火を灯した。息を吸い込み、静かに吐き出す。煙に混ざる風が顔に触れる。終業を告げるチャイムが鳴り、校舎から人が溢れた。

 木にもたれかかり、雑踏を眺める。行き交う学生の声。皆、笑っていた。


 錆色のコートを翻す。波打つ髪が視界を塞いだ。ポケットを探り、指先で触れる。硬く、冷たいものに。


 ──目を覚ませてやるよ。


 煙草を咥え、瞼を閉じた。


────

 亀裂が走る暗い部屋。紫煙が漂い、濁っていた。

 同じコートを着た男が、此方を見ている。


「......後悔するぞ」


 声は細く、小さい。


「しない」


 笑顔で首を振り、懐に手を入れた。

 黒く、重いものを握る。


 瞳を覗き込み、呟いた。


「もう、お前は要らない」


 指を引き絞る。腕に余韻を残し、弾丸が男を貫いていた。


 薬莢が吐き出され、零れ落ちる。

 床に跳ねて転がっていく。


 男はほつれ、霧散する。


────

 路面を跳ねる澄んだ音。耳鳴りが頭蓋に反響していた。


 硝煙の匂いが漂う。


 女が目を見開いている。胸を抑え、崩れ落ちた。滴る液体が地面を伝い、赤黒く拡がる。


「ほら。他人事じゃないだろう?」


 散らばる群れに狙いを定めた。

 終業を告げるチャイムが響く。


 錆色のコートがほつれていた。

 袖口が揺れる。


 その度に倒れていく。

 耳鳴りが反響して。


 ────声は、聞こえない。

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