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螺旋の唄

 


 暗く、美しい空間。何処までも拡がっていた。散らばる粒が瞬いて。黒い光が、星雲を切り裂くように進む。黒い筋を描きながら。

 巨大な縞模様が渦巻く球体が迫る。それを突き抜け、蒼く輝く光に向かう。鮮やかな色彩が波打つ、その世界へ。


 雲を抜けて地表に近づく。舗装された道沿いを進む、黒い光。明滅を放つ窓に、導かれるように。


────

 コトコトと音を立て、鍋から湯気が昇る。輪を描いて、ほどけていく。匂いが広がり、鼻を刺激した。


 一瞬、暗くなる。


 電灯の明滅。頭を掻いて、席を立つ。肉と野菜のスープをよそい、椅子を引く。咳込みながら、座った。震える手で、スプーンを握る。


 皿に入れ、掬いながら視線を向けた。テーブルの端で微笑む、女の写真に。


 二口啜って、咳き込む。しばらく、眺めていた。


 ──息子は、元気だろうか。


 減らない皿を見つめ、溜め息を吐いた。


 硬い音を立てて、明滅が止まる。

 暗闇が拡がり、男の背後で揺らめく。


 黒い霧が。


『お前の、役割が変わる』


 椅子を倒し、床に倒れた。喉が引きつり、声が出ない。後ろ手で後ずさり、凝視した。


『怯えなくていい。それを、伝えに来ただけだ』


 咳込む口を抑えた。掌が、赤く滲む。

 暗闇に拡がる霧が、男を包んだ。歯を、噛み鳴らす。


「......死ぬのか」


 腹の大きい女が、微笑む。


 ──あの子は、いくつになったんだろう。


 咳が止んだ。瞳が、濁っていく。

 胸の痛みが、和らいで。


 ぼんやりと映る。窓の傍に置いた、鉢の花が。大事にしていた、花。


 一枚、散った。ひらひらと零れ、土に還る。

 茎を、虫が齧るのが見えた。


 ──そうだ、たしか......


 口元に浮かぶ、微笑み。写真の女と重なる。


『変わるだけだ』


 赤子の鳴き声が響いていた。螺旋の唄が──


 ────暗く、美しい空間。黒い光が突き進む。鮮やかに明滅する、星雲を巻いて。











コメント

  1. コメント失礼します
    宇宙、あるいは上位の次元から見たとき、
    人も、あらゆる存在も、地球や宇宙という括りの中では
    構成要素そのものは変わらないのだと感じます。
    ただ「あり方」や「個の役割」だけが、
    偶然のように、しかし必然のように巡っていく。
    そんな感覚を静かに渡される詩だと感じました。

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  2. コメントをありがとうございます。
    丁寧に読んでいただいたことが伝わりました。循環の詩として受け取っていただけたようですね。深く、感謝いたします。ありがとうございました。

    返信削除

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