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重なる瘡蓋

 


 ──剥がれる。


 覆っていた瘡蓋が。積み重ね、膨らませたから。滲み、紅を滴らせて。


 薄闇に反射する清流。湿りを帯びた音を鳴らす。傍に着物の女。ただ、佇む。赤子を抱いて。乾いた風がうねる。結った髪を巻き上げ、ほどけた。


 月明かりが照らす赤子の顔。じっと見つめている。自分を凝視する、眼を。


 たもとが揺れる。手が額に伸びていた。指先に触れた瘤。掻くと、爪が僅かに染まる。


 眼尻が吊り上がる。抱く手が震えて。深く息を吐き、赤子を頭上に掲げた。瞳に映る、女の顔。


 空気を切り裂く声──鳴り止まない、音。


「重い」


 飛沫を上げ、清流と混ざる。遠ざかる音が。


 唇の両端がゆっくりと上がる。瘤から瘡蓋が剥がれた。ほどけた髪が額を隠す。


 振り返らず、家路を辿る。

 滴りは止まっていた。


 ────乾き、また蓋を重ねる。盛り上がり、膨らんで。

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