作品アーカイブ (目次)

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壊れる時間


 畳の上に、座布団が敷かれている。その上で胡座をかく男。視線の先に、笑う女がいた。⁠タブレットの中で、派手な衣装に身を包んで。画面の時刻は、0時。


 傍に視線を移し、手を伸ばした。


 テーブルに置かれた、グラス。掴み、唇に運ぶ。琥珀色の液体が波打つ。苦味を感じる。喉仏が上下に動き、音を立てる。息を一つ吐いて、時計を見た。


 瞼を瞬かせ、呟く。


「......壊れたか?」


 秒針が進まない。12の位置で、細かく震えて。


 闇を映す窓。タブレットから流れる音楽。

グラスの氷が、溶けて動く。鳴ることは、ない。


 光を放つ滑らかな硝子。その奥で女が踊っている。赤いスカートを、靡かせながら。


 腰を上げて、踏み締める。畳の目が足裏を擦った。ざらつく感触。


 時計を手に取り、摘みに触れた。手応えなく空回る。首を傾げ、もう一度捻った。


 短針と長針が動く。12に重なった時、秒針が動き出した。


 ──時間を、合わせないと。


 指先に力を込めた。空回りする、摘み。


 笑い声が聞こえた。回りながら笑う女。派手な衣装に身を包んで。


 画面の時刻は、0時。

 

 首を傾げて、電灯を消した。

 布団に寝そべり、いびきが響く。


 ────秒針が震える。暗闇に踊り続けて。

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