作品アーカイブ (目次)

イメージ
  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「見つめるものは」     感情 「変わらない夜」      断片 「記憶の中で」       断片 ─ピックアップ─   テーマ   断片 「蝉に向けて」                               ─テーマ別─ ─境界─       二十四作品 ─時間─               七作品 ─循環─           二十作品 ─感情─           二十作品 ─万有─               九作品 ─価値観─       十八作品 ─日常─           十二作品 ─断片─           十二 作品 ─無─                   三作品 ─掌編─    「見つめるものは」      感情 「変わらない夜」       断片 「記憶の中で」        断片 「蝉に向けて」        断片 「決められた中で」      境界 「戦場の欠片」        感情 「零れたのは」        感情 「アート」          価値観 「眼球の奥」         境界 「飛び去る欠片」          循環 「淵の端から」        感情 「写実した風景」       境界 「同じ場所で」        境界 「無機物の渇望」       境界 「歪んだ花」        ...

走馬燈の奥で


 昼下がりの日差しが、男を照らす。影が路面に伸び、大きく揺れる。

 息を切らせて、走っていた。何度か人にぶつかり、怒鳴られる。脚を止めることは、しない。


 ガードレールが続く歩道の先に、信号が見えた。赤く点灯している。足踏みを繰り返し、周囲を見渡す。


 汗ばんだシャツが、体を冷やしていた。手首を見ると、14時20分。舌打ちして、駆け出した。


 クラクションが鳴り続ける。音に向くと、車が迫っていた。運転手の顔がはっきりと見える。


 ──死。


 猛スピードで、ゆっくりと近づく車。前面が、腰に触れる。衝撃が滲むように広がり、浮き上がる体。


 痛みと共に、映像を映した。懐かしい、光景を。


────

 虫取り網を振り回し、蝶を追いかけている。真剣な眼差しの、少年。


 振り返って、語りかける。声は、聞こえない。


 少女が頷いたあと、笑顔で手首を見せた。14時25分。時刻を示した、腕時計。帰りを促す。


 少年は首を振り、瞳が滲む。


 ──妻は......


 遠くから、サイレンが聞こえる。鉄錆の匂いが、鼻を掠めた。


────

 アスファルトが頬を敷いている。粘つく赤。頭を起こすと、糸を引いて千切れた。


 粉々になった硝子が散らばっている。

秒針が、細かく震えて。


 力が抜け、倒れ込んだ。

自然と笑みが浮かぶ。会いたかった顔が、そこにあったから。


 妻が、手を差し伸べた。

握り返し、静かに立ち上がる。


『間に合わなかった。......お前も』


 頬を濡らして、黙っていた。口を開く代わりに、夫を抱きしめる。影を重ねて。


 ──還ろう。


 ────担架が運ばれていく。もう、そこには居ない。

コメント

このブログの人気の投稿

作品アーカイブ (目次)

境界の鏡

雨上がりの空