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罪の幻想

 


布団を被って、震えていた。口内が乾き、張り付く。男は頭を抱えて、呟いた。


「何となく、拾っただけじゃないか。」


隙間から、覗く。菓子の空箱が、部屋に転がっている。その傍に、少女が佇んでいた。霧のように揺らめいて。


隙間を、閉じる。ぎゅっと、布団の端を掴み、体を包む。


粘つくような、足音が近づく。

滴りを響かせて。


薄暗い部屋。電灯が明滅し、断続的に照らしていた。


────

バイトの帰り道。横断歩道の側に、花と菓子が並んでいた。信号が変わり、何人も渡っていく。


視線を泳がせ、そっと手を伸ばす。素早く掴み、ポケットに捩じ込んだ。少し、重く感じる。


──囁きが、聞こえた。


頭を巡らせ、首を傾げる。息を一つ吐いて、歩き出す。


足音が二つ、重なるように響いていた。眉を顰め、振り返る。誰もいない。


夕暮れの赤に、黒が滲んでいく。


──明滅が、止まった。


────

荒い息が顔を湿らせる。丸めた背中を、小さい手が触れる。布団を跳ね除け、叫んでいた。


「そんなに悪いことかよ!」


『......わかっているのにね。』


短く囁き、霧散した。


歯が、何度も噛み鳴らされる。


......少女の顔を、思い出せない。


鼓動がおさまり、胸に手を添えた。窓から差し込む陽光が、じんわりと体に沁みる。空箱を見つめ、立ち上がった。


──あの場所へ。


風が、花を揺らす。

信号は、青。


花びらが散った時、手を合わせた。


───菓子を供え、祈る。男は、誰のために。

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