作品アーカイブ (目次)

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  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「筆の先で」        境界 「積まれた煉瓦」      感情 「枯葉と砂」        日常 「線の先は」        境界 ─ピックアップ─ テーマ  時間 「重なる景色」 ─テーマ別─ ─境界─       十四作品 ─時間─           七作品 ─循環─       十三作品 ─感情─           十一作品 ─万有─           七作品 ─価値観─   十五作品 ─日常─           十一作品 ─断片─           四作品 ─無─               三作品 ─掌編─    「筆の先で」         境界 「積まれた煉瓦」       感情 「越えた後」         境界 「シリアルを咀嚼して」    感情   「街の跡」          日常 「旋回する夜」        日常 「閉じた瞼」         境界 「瓦礫の理由」        境界 「配慮の有無」        価値観 「銀の牢獄」         境界 「重なる瘡蓋」        境界 「見えない顔」        日常 「神木の瞳」         価値観 「最後の理性」        感情 「月光に照らされて」     感情 「重なる景色」        時間 「境界の先で」        循環 「寄り添う枯葉」       日常 「いやし」          循環 「編まれゆく造形」      循環 「ずれた距離」        日常 「刻まれた断片」    ...

等しい欠片


 乾いた音が連なって、幾重にも重なり続けていた。気怠い体。背は丸まり、集中できない。

 思考を靄が包み込む。キーボードから指を離し、目頭を押さえた。ふと、溢れる。


『俺は何をしているんだろう。この仕事は何のためだ』


 何度も押して、思い出す。


『......金を、得る為』


 打鍵の音が響く部屋。誰もが席に座り、モニターを見つめている。指はせわしなく動き続けて。


 明るい照明が、皆を照らしていた。無表情に画面を見つめる、同じ顔を。


 ──生きるために。養うために。


叱責する声が聞こえてくる。打鍵の音と混ざりながら。混濁する響きの中で、同僚の一人が項垂れていた。


 ──我慢しなければ。


 窓の外で雲が流れている。緋色に染まった空を。喧騒に浮かぶ笑い声。風に攫われ、散っていく。


 疑うことなく、キーを叩いていた。皆と同様に。ぼんやりと、同僚の顔を眺めた。


 同じだ。皆、同じ。項垂れ、震えるあの男も。叱責を続けるあの男も。


 終業のベルが鳴り響いた。


 反射的に仰け反り、視界が広がる。

打鍵の音が止む。叱責の声も。ぞろぞろと頭を下げて、帰っていく。


 一人が振り返って、口を開いた。


「お前も早く帰れよ」


「俺に言ったんだよな?お前じゃなくて」


 眉を顰める同僚。首を傾げて、ドアを閉じた。


 残響の中、頭を振る。鞄を掴み、席を立つ。靄はかかったままだ。無意識に外に出た。月光と街明かりが交錯する。


 夜風が紙屑を転がし、前髪を揺らす。街灯に群がる羽虫を見つめて。


 ──同じだ。


 視線を外し、歩道に踏みだす。思考の靄が霧散した。


 疑いもなく往き交う人々。その雑踏へ紛れに行く。群衆に溶けた男。一部となって、ただ巡る。


 ────違いなど、ない。刻まれた跡を辿るだけで。

コメント

  1. 間近で視ているような臨場感がありました。

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  2. コメントをありがとうございます。
    臨場感を感じていただけたとのこと。とても嬉しく思います。
    また気軽に覗いてくだされば、幸いです。感謝いたします。ありがとうございました。

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