作品アーカイブ (目次)

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  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「筆の先で」        境界 「積まれた煉瓦」      感情 「枯葉と砂」        日常 「線の先は」        境界 ─ピックアップ─ テーマ  時間 「重なる景色」 ─テーマ別─ ─境界─       十四作品 ─時間─           七作品 ─循環─       十三作品 ─感情─           十一作品 ─万有─           七作品 ─価値観─   十五作品 ─日常─           十一作品 ─断片─           四作品 ─無─               三作品 ─掌編─    「筆の先で」         境界 「積まれた煉瓦」       感情 「越えた後」         境界 「シリアルを咀嚼して」    感情   「街の跡」          日常 「旋回する夜」        日常 「閉じた瞼」         境界 「瓦礫の理由」        境界 「配慮の有無」        価値観 「銀の牢獄」         境界 「重なる瘡蓋」        境界 「見えない顔」        日常 「神木の瞳」         価値観 「最後の理性」        感情 「月光に照らされて」     感情 「重なる景色」        時間 「境界の先で」        循環 「寄り添う枯葉」       日常 「いやし」          循環 「編まれゆく造形」      循環 「ずれた距離」        日常 「刻まれた断片」    ...

映す鏡

 


 薄闇に流れる風が、紐に結んだ紙を煽る。風鈴が揺れ、澄んだ音が鳴った。若者が騒ぐ声と響きながら。部屋を照らす電灯に蠅が停まり、脚を擦る。


 座布団の上で、テーブルに手を伸ばした。

掴んだコップに酒を注ぎ、口に運ぶ。唇を湿らせ、つまみを頬張る。咀嚼しながら眺めた。


 開いたアルバムに並んだ写真。生命力に満ちた、若い笑顔。細いが、引き締まった体。硬い紙を捲る指が、震えている。


──これは本当に、俺なのか?


 顔を上げると、姿見が目に入る。

鏡に映す、中年の太った男。くたびれた表情と視線が絡む。深く刻まれた皺と唇が、僅かに動いた。


『お前は、何度も入れ替わっている。細かく、死にながら』


 頬を撫でると、瘡蓋が剥がれた。

酒臭い息に眉を顰めると、鏡の眉も動く。


 ──ずっと、繋がっていたはず。同じ俺が。ただ、歳をとっただけだ。


 蠅の羽音が響き、アルバムが囁く。


『あんたと俺は、違う存在だ』


 無数の声が反響する。


『その記憶は、確かか?』


 風鈴が、鳴る。若者の声と共に。

鏡の男が呟いている。


『あやふやだろう?そりゃそうだ。何度も、入れ替わってるんだから。それも、もうすぐ終わる』


 瞼が、ゆっくりと降りてきた。テーブルの酒が倒れ、写真を濡らす。染み込んだ液体が、黒く滲んだ。


 電灯から、蠅が落ちた。閉じた瞼に。朝焼けの光が、部屋を照らす。


 ────風鈴が、揺れた。澄んだ音を残して。

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