作品アーカイブ (目次)

イメージ
  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「無機物の渇望」      境界 「歪んだ花」         境界   「編まれた柱」       循環 「消えていく顔」      断片 「錯覚のまま」       断片 ─ピックアップ─ テーマ   万有 「10^-10^50の虚構」                  ─テーマ別─ ─境界─           十九作品 ─時間─               七作品 ─循環─           十七作品 ─感情─           十四作品 ─万有─               八作品 ─価値観─       十七作品 ─日常─           十一作品 ─断片─               八 作品 ─無─                   三作品 ─掌編─    「無機物の渇望」       境界 「歪んだ花」         境界 「消えていく顔」       断片 「錯覚のまま」        断片 「ただ、純粋に」       価値観 「選べるなら」        断片 「種の中で」         循環 「いない気がして」      境界 「跳ねたコイン」       価値観 「溢れた珈琲」        境界 「10^-10^50の虚構」       万有 「少女の花弁」        感情 「巡る日常」         境界 「視線...

剥製



 笑い声が響く。子供がはしゃいで。食卓で料理を摘んでいた。妻と娘が食事を済ませ、遊びはじめる。それを横目に視線を戻す。

 大きなテレビ画面。映った部屋には、鹿の剥製が飾られている。眺めながらグラスを掴んだ。波打つ、白く透明な液体。ワインの香りが鼻腔に届いた。


 皿の上に蟹の胴体。脚は全てもぎ取られ、胴の前面がくり抜かれていた。詰まった身に箸を伸ばす。口に入れて、咀嚼する。繰り返し、摘んだ。殻に付いた眼がその度に揺れる。白く、濁って。


 肉とワインが混ざり、喉を滑る。甘みを苦味が包み込む。空っぽになった、蟹。気付いた妻が盆に乗せる。娘が覗き込んで、目を輝かせた。


「この蟹、可愛い。ちょうだい!」


「駄目だよ。汚い。捨てるんだから」

 

 妻が答えると、娘が蟹を掴んだ。台所に向かう。蛇口を捻り、丁寧に洗っている。タオルに乗せ、ゆっくりと戻って来た。


「綺麗だよ。これならいいでしょ?」


 妻と視線が合う。沈黙を、漂わせて。

 蟹の眼──鹿の、黒い瞳。


 ────剥製を見つめていた。白く、濁って。



コメント

このブログの人気の投稿

作品アーカイブ (目次)

境界の鏡

雨上がりの空