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  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「筆の先で」        境界 「積まれた煉瓦」      感情 「枯葉と砂」        日常 「線の先は」        境界 ─ピックアップ─ テーマ  時間 「重なる景色」 ─テーマ別─ ─境界─       十四作品 ─時間─           七作品 ─循環─       十三作品 ─感情─           十一作品 ─万有─           七作品 ─価値観─   十五作品 ─日常─           十一作品 ─断片─           四作品 ─無─               三作品 ─掌編─    「筆の先で」         境界 「積まれた煉瓦」       感情 「越えた後」         境界 「シリアルを咀嚼して」    感情   「街の跡」          日常 「旋回する夜」        日常 「閉じた瞼」         境界 「瓦礫の理由」        境界 「配慮の有無」        価値観 「銀の牢獄」         境界 「重なる瘡蓋」        境界 「見えない顔」        日常 「神木の瞳」         価値観 「最後の理性」        感情 「月光に照らされて」     感情 「重なる景色」        時間 「境界の先で」        循環 「寄り添う枯葉」       日常 「いやし」          循環 「編まれゆく造形」      循環 「ずれた距離」        日常 「刻まれた断片」    ...

剥製



 笑い声が響く。子供がはしゃいで。食卓で料理を摘んでいた。妻と娘が食事を済ませ、遊びはじめる。それを横目に視線を戻す。

 大きなテレビ画面。映った部屋には、鹿の剥製が飾られている。眺めながらグラスを掴んだ。波打つ、白く透明な液体。ワインの香りが鼻腔に届いた。


 皿の上に蟹の胴体。脚は全てもぎ取られ、胴の前面がくり抜かれていた。詰まった身に箸を伸ばす。口に入れて、咀嚼する。繰り返し、摘んだ。殻に付いた眼がその度に揺れる。白く、濁って。


 肉とワインが混ざり、喉を滑る。甘みを苦味が包み込む。空っぽになった、蟹。気付いた妻が盆に乗せる。娘が覗き込んで、目を輝かせた。


「この蟹、可愛い。ちょうだい!」


「駄目だよ。汚い。捨てるんだから」

 

 妻が答えると、娘が蟹を掴んだ。台所に向かう。蛇口を捻り、丁寧に洗っている。タオルに乗せ、ゆっくりと戻って来た。


「綺麗だよ。これならいいでしょ?」


 妻と視線が合う。沈黙を、漂わせて。

 蟹の眼──鹿の、黒い瞳。


 ────剥製を見つめていた。白く、濁って。



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