作品アーカイブ (目次)

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  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「無機物の渇望」      境界 「歪んだ花」         境界   「編まれた柱」       循環 「消えていく顔」      断片 「錯覚のまま」       断片 ─ピックアップ─ テーマ   万有 「10^-10^50の虚構」                  ─テーマ別─ ─境界─           十九作品 ─時間─               七作品 ─循環─           十七作品 ─感情─           十四作品 ─万有─               八作品 ─価値観─       十七作品 ─日常─           十一作品 ─断片─               八 作品 ─無─                   三作品 ─掌編─    「無機物の渇望」       境界 「歪んだ花」         境界 「消えていく顔」       断片 「錯覚のまま」        断片 「ただ、純粋に」       価値観 「選べるなら」        断片 「種の中で」         循環 「いない気がして」      境界 「跳ねたコイン」       価値観 「溢れた珈琲」        境界 「10^-10^50の虚構」       万有 「少女の花弁」        感情 「巡る日常」         境界 「視線...

時の揺らぎ



 口を大きく開き、欠伸した。滲んだ目尻を指で擦る。少年は時計を見ていた。10時50分。

鼻を掻いて、鉛筆を指で挟む。くるくる回してノートを捲った。


 教壇の前に立つ教師。後ろ姿に視線を移す。

腕が揺れ、チョークを繰り返し打ちつけていた。黒板に文字が浮かび、白粉が散る。


 開いた窓から風が流れて、髪を揺らす。目を細め、外を眺めた。視線の先に男がいる。ベンチに座り、パンを齧って。スーツにこぼれたパン屑を、足元に落とした。


 木の枝が揺れ、囁く葉が語りかける。耳を傾けていると、瞼がゆっくり降りてきた。


 ──チャイムが鳴る。


 短い針が、11を指していた。

目を開いて前を向くと、教師がノブを掴んでいる。閉じる音が響いたあと、ロッカーに駆け寄った。


 ボールを抱えて廊下に飛び出す。何人も続く。飛び降りながら階段を下り、全力で走った。

校庭が視界に広がる。敷き詰めた砂に、幾つもの足跡が残った。


 舞い上がる砂が、煙のようだ。陽光を浴びて、反射する。輝きながら宙を漂う。


 つま先で線を繋ぎ、陣地を作る。雄叫びを上げた。助走をつけてボールを投げる。


────

 パンの袋を丸め、鞄に突っ込む。煙草を取り出し、口に咥えた。ベンチにもたれかかって頭を掻く。校庭ではしゃぐ子供たちが、ボールをぶつけ合っていた。腕時計に視線を移す。


 ──11時5分。一本吸って、10分くらいか。


 ライターを弾いて火を灯す。息を吸い込んだ。吐き出され、輪を描いた連なる煙。ほどけ散って、霧散した。


 歓声が聞こえる。最後の一人が天を仰いだ。子供の声が重なり、波となって男を包む。

時計を覗くと、11時8分。


子供たちが校舎に向かって駆け出した。

ふと、少年が振りかえる。男と視線が交わり、微笑む。


 煙草の火が燻っていた。溜め息を吐いて、一口吸う。少年は、もう居ない。ゆっくりと腰を上げた。


 地面に転がし、踏みつける。


 ────チャイムの音が、鳴り続けた。

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