作品アーカイブ (目次)

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  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「筆の先で」        境界 「積まれた煉瓦」      感情 「枯葉と砂」        日常 「線の先は」        境界 ─ピックアップ─ テーマ  時間 「重なる景色」 ─テーマ別─ ─境界─       十四作品 ─時間─           七作品 ─循環─       十三作品 ─感情─           十一作品 ─万有─           七作品 ─価値観─   十五作品 ─日常─           十一作品 ─断片─           四作品 ─無─               三作品 ─掌編─    「筆の先で」         境界 「積まれた煉瓦」       感情 「越えた後」         境界 「シリアルを咀嚼して」    感情   「街の跡」          日常 「旋回する夜」        日常 「閉じた瞼」         境界 「瓦礫の理由」        境界 「配慮の有無」        価値観 「銀の牢獄」         境界 「重なる瘡蓋」        境界 「見えない顔」        日常 「神木の瞳」         価値観 「最後の理性」        感情 「月光に照らされて」     感情 「重なる景色」        時間 「境界の先で」        循環 「寄り添う枯葉」       日常 「いやし」          循環 「編まれゆく造形」      循環 「ずれた距離」        日常 「刻まれた断片」    ...

走馬燈の奥で


 昼下がりの日差しが、男を照らす。影が路面に伸び、大きく揺れる。

 息を切らせて、走っていた。何度か人にぶつかり、怒鳴られる。脚を止めることは、しない。


 ガードレールが続く歩道の先に、信号が見えた。赤く点灯している。足踏みを繰り返し、周囲を見渡す。


 汗ばんだシャツが、体を冷やしていた。手首を見ると、14時20分。舌打ちして、駆け出した。


 クラクションが鳴り続ける。音に向くと、車が迫っていた。運転手の顔がはっきりと見える。


 ──死。


 猛スピードで、ゆっくりと近づく車。前面が、腰に触れる。衝撃が滲むように広がり、浮き上がる体。


 痛みと共に、映像を映した。懐かしい、光景を。


────

 虫取り網を振り回し、蝶を追いかけている。真剣な眼差しの、少年。


 振り返って、語りかける。声は、聞こえない。


 少女が頷いたあと、笑顔で手首を見せた。14時25分。時刻を示した、腕時計。帰りを促す。


 少年は首を振り、瞳が滲む。


 ──妻は......


 遠くから、サイレンが聞こえる。鉄錆の匂いが、鼻を掠めた。


────

 アスファルトが頬を敷いている。粘つく赤。頭を起こすと、糸を引いて千切れた。


 粉々になった硝子が散らばっている。

秒針が、細かく震えて。


 力が抜け、倒れ込んだ。

自然と笑みが浮かぶ。会いたかった顔が、そこにあったから。


 妻が、手を差し伸べた。

握り返し、静かに立ち上がる。


『間に合わなかった。......お前も』


 頬を濡らして、黙っていた。口を開く代わりに、夫を抱きしめる。影を重ねて。


 ──還ろう。


 ────担架が運ばれていく。もう、そこには居ない。

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