作品アーカイブ (目次)

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  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「無機物の渇望」      境界 「歪んだ花」         境界   「編まれた柱」       循環 「消えていく顔」      断片 「錯覚のまま」       断片 ─ピックアップ─ テーマ   万有 「10^-10^50の虚構」                  ─テーマ別─ ─境界─           十九作品 ─時間─               七作品 ─循環─           十七作品 ─感情─           十四作品 ─万有─               八作品 ─価値観─       十七作品 ─日常─           十一作品 ─断片─               八 作品 ─無─                   三作品 ─掌編─    「無機物の渇望」       境界 「歪んだ花」         境界 「消えていく顔」       断片 「錯覚のまま」        断片 「ただ、純粋に」       価値観 「選べるなら」        断片 「種の中で」         循環 「いない気がして」      境界 「跳ねたコイン」       価値観 「溢れた珈琲」        境界 「10^-10^50の虚構」       万有 「少女の花弁」        感情 「巡る日常」         境界 「視線...

ただ、純粋に

 


 一人、ベンチに腰掛けていた。ほつれた服の袖から覗く手は、黒く汚れている。膝に置いた袋を弄り、パンを掴んだ。皺だらけのビニールが、擦れた音を鳴らす。

 日焼けした顔の前に取り出し、じっと見つめた。唇を舐めて、一口齧る。咀嚼しながらペットボトルに手を伸ばした。


 喧騒が行き交う歩道を眺め、蓋を捻る。蒼空から注がれる光を、水が反射していた。


 日差しを影が遮る。顔を上げ、目を細めた。男が頭を下げている。指先をパンに向けて。


 頷いて微笑み、袋を差し出す。受け取って去っていく背中。飲み口を咥え、喉を湿らす。カルキの臭いが僅かにした。


 小さく息を吐き、俯いて目を閉じる。

 靴音が近付いて来た。


 瞼を開く。


 皺だらけのビニール袋が目の前で揺れていた。先程の男が微笑んでいる。ポケットから紙幣を取り出し、差し出して。


 分厚い束。

 男の微笑み。


 ──視界が滲んだ。


 被りを振り、顔を両手で覆う。喧騒が遠ざかる。ゆっくりと立ち上がり、頭を下げた。


 顔を上げて視線を合わせる。

 静かに揺らして。


 ────首を、左右に。

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