作品アーカイブ (目次)

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跳ねたコイン



  目を伏せて掌を擦る。前に置いた空き缶を凝視して。コンクリートの地面が臀部を冷やす。手の皮膚が乾き、ひび割れていた。裂けた傷に沿って紅く滲む。


 硬く、澄んだ音がした。


 顔を上げ、頭を下げる。通り過ぎた背中を見つめた。行きかう人々。皆、視線を前に向けている。


 俯き、空き缶を覗く。コインが一枚入っていた。息を吸いこみ、溜息を吐く。周囲に視線を巡らし、喧騒を眺めた。

 

 緋色に染まった街並みを、暗闇が覆っていく。街灯が点灯し、羽虫が群がって。電灯にぶつかる音を聞きながら、静かに腰を上げる。腕を伸ばし、空き缶を掴んだ。


「ずっとそこに座ってたね。何で?」


 顔を上げると、少年と目が合った。暫く沈黙し、目を反らす。俯いて歩き出した。足音が背後から聞こえる。速足で進んだ。


 交互に鳴る、二人の靴音。立ち止まり、振り返った。


「付いてくるな」


「無視するからだよ。ねぇ、何で?」


 にこにこと笑う少年を睨みつけ、舌打ちする。


「金が貰えるからだ。これで満足か?」


「働いたらいいのに」


 紅潮した顔が熱で火照る。目の前の子供が笑っていた。目を伏せて地面を見る。舗装された道が、滲む。


 零れ落ちた連なる滴り。路面を濡らし、嗚咽が漏れる。


 遠くで雑談が聞こえた。


「何で泣いてるの?」


 目を見開き、顔を見る。胸倉を掴み、叫んでいた。


 少年はにこにこと笑う。


 前から歩いて来た男と女が、首を傾げて通り過ぎる。


 ────コインが一枚、地面に跳ねた。

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