投稿

2月, 2026の投稿を表示しています

作品アーカイブ (目次)

イメージ
  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「筆の先で」        境界 「積まれた煉瓦」      感情 「枯葉と砂」        日常 「線の先は」        境界 ─ピックアップ─ テーマ  時間 「重なる景色」 ─テーマ別─ ─境界─       十四作品 ─時間─           七作品 ─循環─       十三作品 ─感情─           十一作品 ─万有─           七作品 ─価値観─   十五作品 ─日常─           十一作品 ─断片─           四作品 ─無─               三作品 ─掌編─    「筆の先で」         境界 「積まれた煉瓦」       感情 「越えた後」         境界 「シリアルを咀嚼して」    感情   「街の跡」          日常 「旋回する夜」        日常 「閉じた瞼」         境界 「瓦礫の理由」        境界 「配慮の有無」        価値観 「銀の牢獄」         境界 「重なる瘡蓋」        境界 「見えない顔」        日常 「神木の瞳」         価値観 「最後の理性」        感情 「月光に照らされて」     感情 「重なる景色」        時間 「境界の先で」        循環 「寄り添う枯葉」       日常 「いやし」          循環 「編まれゆく造形」      循環 「ずれた距離」        日常 「刻まれた断片」    ...

銀の牢獄

イメージ
 鉱脈に滑り込む先端。穿ち、突き刺す。硬質な響きを耳に残して。零れ落ちた欠片が床を跳ねる。鶴嘴を食い込ませたまま、手を止めた。  首に巻いた手拭いを掴み、ゆっくりと顔を擦る。黒が移され、生地に滲んだ。 鉱脈に滑り込む先端。穿ち、突き刺す。硬質な響きを耳に残して。  零れ落ちた欠片が床を跳ねる。鶴嘴を食い込ませたまま、手を止めた。首に巻いた手拭いを掴む。ゆっくりと顔を擦る。黒が移され、生地に滲んだ。  水流の音が聞こえる。 熱水が岩の隙間を流れていた。割れ目を縫って、紡いでいく。  ──天井が、揺れた。  岩が欠け、亀裂が拡がる。落石が降り注ぐ。大勢の叫びに鼓動が早まる。駆け出す男の背を、欠片が抉って。うつ伏せに倒れ、振動を感じた。  瞼が降り、闇に溶ける。 ────  水滴が頬を伝う。身体は動かない。指先に触れる、冷たいもの。掌で包んだ。隙間から光が差し込む。  薄目に映す光景。唇が震え、声が出ない。  ──鏡面の世界。数多の洞窟が、反響する。  鉱石に囲まれていた。僅かな光が増幅する。中心にいる男を写して。  握っていた輝く鉱石。歪んだ顔が映っていた。腕が動く。顔前に運び、目を開いた。  覗いた先の景色が。揺らぎ、塗り替わる。 ────  硬質な音が聞こえた。反響し、手拭いが靡く。鉱脈に突き刺さった鶴嘴。  零れた欠片。  水流の音。  滲む手拭い。  ──天井が、揺れた。  叫んでいた。皆に呼びかけ、駆け出す。  ────握られた鉱石。鈍く、黒く。

重なる瘡蓋

イメージ
    ──剥がれる。  覆っていた瘡蓋が。積み重ね、膨らませたから。滲み、紅を滴らせて。  薄闇に反射する清流。湿りを帯びた音を鳴らす。傍に着物の女。ただ、佇む。赤子を抱いて。乾いた風がうねる。結った髪を巻き上げ、ほどけた。  月明かりが照らす赤子の顔。じっと見つめている。自分を凝視する、眼を。  たもとが揺れる。手が額に伸びていた。指先に触れた瘤。掻くと、爪が僅かに染まる。  眼尻が吊り上がる。抱く手が震えて。深く息を吐き、赤子を頭上に掲げた。瞳に映る、女の顔。  空気を切り裂く声──鳴り止まない、音。 「重い」  飛沫を上げ、清流と混ざる。遠ざかる音が。  唇の両端がゆっくりと上がる。瘤から瘡蓋が剥がれた。ほどけた髪が額を隠す。  振り返らず、家路を辿る。  滴りは止まっていた。  ────乾き、また蓋を重ねる。盛り上がり、膨らんで。

見えない顔

イメージ
 電灯が部屋を明るく照らす。キーを叩く軽い音。時折止まる。一点を凝視し、小さく呟く。溜め息を重ねて。  モニターが映す、並んだ数字。 13時間。1。0。0。 何度も見返す。自分で綴った文字の羅列を。  椅子を軋ませ、席を立つ。強く瞬きを繰り返し、冷蔵庫に向かった。早足で歩いてドアを開く。電子音が鳴っていた。混ざった臭いが鼻を掠める。ラベルも見ずに、ペットボトルを握った。大股に席へ戻って。  マウスを掴み、指を小刻みに揺らす。 13時間20分。2。0。0。唇が緩み、歯が覗く。  モニターを見つめる。スクロールを繰り返し、人差し指で何度も押す。  頷いて、椅子にもたれかかる。瞼を閉じた。 微睡の中で、ふと目を開ける。頭を振りながら手を伸ばして。  蓋を捻り、喉に流し込む。胃に流れる冷たい液体。口に当てながら、モニターに視線を移した。上下に動く喉仏が止まる。  16時間20分。2。0。0。  目を細めると、眉間に皺が刻まれた。マウスを指で叩き続ける。キーを叩き、またスクロールして。  陽光が部屋に差し込み、照明と混濁する。  ────打鍵が響く。指で叩く、軽い音が。

神木の瞳

イメージ
 色褪せた刃が幹に食い込む。枝がしなり、葉が揺れて。澄んだ音が響き、乾いた欠片が散らばる。柄を持つ手が湿り、僅かに滑った。斧を地に立て、額を拭う。  囀りを繰り返していた鳥。枝を蹴って羽ばたいた。目で追いながら両手で握り直す。振りかぶり、力を込めて。繋がりを、断つ。  ──葉が、ざわめいた。  ゆっくりと折れていく。湿り気を帯びた、裂かれる音。横たわり、地面を抉った。樹木の上で鳥が囀る。黒い瞳が覗いていた。土に沈む、注連縄を映して。  視線を交わし、笑みを浮かべる。斧を投げ捨て、口を開く。 「役目が終わったんだ」   鳥を見つめ、紡いだ。 「......ありがとう」  切り株に向き直り、年輪を認めた。 注連縄を拾い、付いた泥を丁寧に拭う。  斧を掴んで歩き出す。  囀りは聞こえない。冷たい風が葉を撫でた。ざわめきだけが、残されて。  ────黒い瞳が見つめている。男の背中を。

イメージ
 雑草が生い茂る。歪な楕円を避け、一面に。 下で蠢く虫が、土に潜る。石は、動かない。  雨粒に打たれる。ただ、浴び続けた。なぞり、滴り、滑り落ちて。  雲が散り、日差しが包む。濡れた表面を炙り、蒸気が昇る。  ──何度も、  僅かに削れ。 欠けて、零れて。  色は深く。 沁みて、褪せて。  幾度も──  千切れた雲が寄り添い、繋がる。湿り気を帯び、覆い隠す。  灰色の空が。  閃く筋を伸ばし──砕く。  無数の破片が、飛散して。  転がる中で鳴り響く。焦げた地面に、虫を燃やす。  ────残骸を残して。また、じっと。

最後の理性

イメージ
 煙草に火を灯した。息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。煙と混ざる風が顔にかかる。 終業を告げるチャイムが鳴り、校舎から人が溢れた。  木にもたれかかり、雑踏を眺める。行き交う学生が忙しなく歩いて。  錆色のコートを翻す。波打つブロンドの髪。ポケットを探ると、指先に触れる。硬く、冷たい物が。  ──こうするしか。  煙草を咥え、目を閉じた。タールが肺に沁みて、馴染む。煙を吐き出して。 ────  壁の亀裂が目立つ薄暗い部屋。紫煙が漂う。 灰皿に押し付け、吹きかける。錆色のコートを着た男に。 「......後悔するぞ。」  瞳を覗き、紡いだ。コートの裾がほつれていた。 「しないよ。」  ブロンドが揺れる。ポケットから取り出した。黒く、鈍い光沢を。冷たく、硬い物を。 「......もう、君は要らない。」  指を引き絞る。腕に余韻を残し、男を貫く。吐き出され、零れ落ちる──床を跳ねて。  錆色のコートはほつれ、ほどける。ブロンドと共に。霧散する。硝煙を残して。 ────  路面を跳ねる薬莢の音。耳鳴りが頭蓋に反響する。何も聞こえない。  硝煙の匂いが、した。  女が目を見開く。弾丸が貫いていた。ゆっくりと崩れ、うつ伏せに倒れた。赤黒く滲む染みが、地面に拡がる。 「お前らは、俺を見ないんだろう?」  群れが散る。逃げる背中を追い続けた。  始業を告げるチャイムが響く。  誰にも聞こえない。  髪が一本、抜け落ちた。陽光に輝くブロンドが。  ────錆色のコートが僅かに揺れて。風が、止む。