作品アーカイブ (目次)

イメージ
  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「筆の先で」        境界 「積まれた煉瓦」      感情 「枯葉と砂」        日常 「線の先は」        境界 ─ピックアップ─ テーマ  時間 「重なる景色」 ─テーマ別─ ─境界─       十四作品 ─時間─           七作品 ─循環─       十三作品 ─感情─           十一作品 ─万有─           七作品 ─価値観─   十五作品 ─日常─           十一作品 ─断片─           四作品 ─無─               三作品 ─掌編─    「筆の先で」         境界 「積まれた煉瓦」       感情 「越えた後」         境界 「シリアルを咀嚼して」    感情   「街の跡」          日常 「旋回する夜」        日常 「閉じた瞼」         境界 「瓦礫の理由」        境界 「配慮の有無」        価値観 「銀の牢獄」         境界 「重なる瘡蓋」        境界 「見えない顔」        日常 「神木の瞳」         価値観 「最後の理性」        感情 「月光に照らされて」     感情 「重なる景色」        時間 「境界の先で」        循環 「寄り添う枯葉」       日常 「いやし」          循環 「編まれゆく造形」      循環 「ずれた距離」        日常 「刻まれた断片」    ...

未来の記憶



 机の落書きに、指を這わせる。なぞりながら頬を置いた。ひんやりとして、少しざらつく。

セーターの袖口に毛玉が幾つか見えた。周囲のざわめきを感じながら、瞼を閉じる。教室と、乾いた冬の匂い。どこか懐かしい、匂い。


────

 目覚ましが鳴り響いた。目を擦り、時計を何度も叩く。腕を伸ばして、欠伸した。

窓から差し込む光に目を細める。カーテンの揺れが風に巻き付く。


 夢を見ていた。懐かしい記憶。思い出せない。頭を振って、視線を移す。妻が置いた、テーブルのコップ。湧き上がるコーヒーの湯気。香ばしい匂いを纏い、立ち昇る。


 ハンガーに手をかけ、Yシャツに袖を通す。ボタンを留めて、ズボンを履く。席に腰掛け、熱い液体を口に含んだ。苦味が広がり、それを飲み込む。


────

 誰もいない教室。カーテンが揺れている。落書きをなぞりながら、想像していた。思い描くのは、未来の自分。就職して、結婚して──


 カバンから取り出した缶コーヒーを口に含む。冷たく、甘い。自分の妻を思い出す。髪が長くて、顔立ちは......目が大きくて、まつ毛は......


瞼が、重くなる。目を閉じて、思い出す。


────

妻が弁当を渡してきた。まじまじと見つめる。髪が長くて、口が小さい。目は大きくて、まつ毛が長い。鼻は少し低くて......


「遅れるよ。お弁当、忘れてるし」


 ずっと前から知ってる顔。しばらく眺めていた。妻のセーター。毛玉を摘んで、千切る。


「毛玉はいいから。......ほんとに遅れるよ?」


 ──ああ、そうか。思い出した。


 微笑んで、ドアを開けた。乾いた冬の匂いに、教室の匂いが重なる。首を傾げた妻が、手を振った。


「いってらっしゃい。」


 ────想像と記憶が交錯する。干渉の先に、今を映した。

コメント

このブログの人気の投稿

境界の鏡

作品アーカイブ (目次)

雨上がりの空