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狐狼の傷跡 三章『傷痕』第四話「戸山流」

 


 山西省・古都太原。城壁が四角く囲い、分厚い門上には楼閣が見える。門をくぐると、風が吹き、土を巻き上げる。一帯が黄土色に覆われ、街全体を塗り潰していた。


 城壁の下に立ち並ぶ、棚子の小屋。崩れた煉瓦と泥を固めた煉瓦を積み上げ、木板を立てかけて造られている。地面は湿った黒い泥で覆われていた。


 朱いチャイナドレスの女が、背筋を伸ばして歩いている。並んだ家屋の中で、大きな建物があった。石造で出来ている。黒塗りの板塀で囲われていた。塀を抜けて玄関を横切り、松が生えた庭園を横切って行く。池を越えると、巻藁が見える。その横に縁側の廊下に腰掛けた男が居た。茶を啜り、女を見る。


「凛か。どうした?」

 朱鳳凛が頭を下げた。白髪混じりの髪を、肩まで伸ばした和装の男──田上十蔵に。

「死合いの相手が見つかりました。もう少し、準備に時間がかかりますが」


 腰を上げ、顔の皺を深く刻む。傍に置いた軍刀を掴んだ。巻藁に近付き、柄を握る。右腕が弧を描き、刃が下から斜めに閃く。戸山流抜刀──逆袈裟斬り。断たれ、僅かにずれる。音は、しない。


 獅子おどしが、鳴った。


「楽しめるだろうな?」

 鞘に納めると、澄んだ音がした。向き直る。眼光が、朱鳳凛を射抜いた。細い腕を組み、視線を外して薄い唇を開く。

「......ええ。楽しめます。歩法を教えました」


 しゃがれた笑い声が響き、松に留まっていた鳥が枝を蹴った。

「待つとしよう。儂が敗れることを期待しろ。足りなければ、教えてやれ」


 鬢の毛を垂らし、顔を上げた。踵を返して歩き出す。背中に、声が飛んだ。

「凛。儂に暗殺の仕事が入っておる。暫くおらん。その間に仕上げてやれ」

「わかりました。また、来ます」


 振り返らずに砂利を踏む。乾いた空気が、唇を乾燥させていた。

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