作品アーカイブ (目次)

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最後の贈与



 空を見上げると、灰色の雲が光を遮っていた。僅かに漏れる陽光が、夜ではないことを知らせる。木の葉が風に乗り、窓から入ってきた。戯れで脚を伸ばす。捕まえた。舐めてみたが、青臭い。


 皿にある水を舐める。腹が膨れることはない。だけど、誤魔化せる。友達の手が、ゆっくりと近づいてきた。水を、舐め続ける。腹が満たされ、大きな手に頭を擦りつけた。


 両手で抱き抱えられて、膝に乗せられる。抵抗する必要がないことを知っていた。見上げると、友達が目を細めている。尻尾を一度振って、静かに鳴く。


 この空間に、他の生き物が来たことはない。友達を見つめ、もう一度鳴いた。


 優しく抱えられ、隣に降ろされる。友達は立ち上がり、歩いていく。腕を伸ばすのを見ていた。あの何かを捻ると、水が出てくるんだ。


 大きな手で捻っていたが、水が出てこない。一滴だけ、落ちるのが見えた。友達が項垂れ、座り込む。そのまま横に。顔を舐めようと思って近づいていく。元気がなさそうだったから。

 友達の顔を舐めると、目を開く。口の端を少し上げてくれた。いつもと同じ優しい目。


 何かが動く気配がする。


 ──灰色の、長い尻尾。


 身を沈ませ、機会を伺う。
破れた隙間から出てきた。見逃さない。首筋を、牙が貫く。
咥えたまま歩いて、顔の前に置く。友達は口を開けて、目を細めた時にする音を出していた。いつもより小さい音だけど。

 ゆっくりと灰色の尻尾を掴むと、返してくる。腹は減っていたが、食べさせないと。


 友達を見つめていた。
寝てしまったんだろうか?でも、寝息が聞こえない。



────
 遮断された光。外は暗くなっていた。辺りは静かで、自分の気配しかしない。寝てしまったようだし、友達が食べないなら食べよう。


 咀嚼するたびに灰色の毛が赤く染まる。
少し満足し、皿に残った水を舐める。水面に、赤い筋が細く走って。友達は動かない。


 太陽が昇り、また沈む。何度も見ていた。体が思うように動かない。灰色の長い尻尾。白く硬い姿。床に、散らばってる。

 匂い。友達の顔。近づいて、舐める。何度も。齧っていた。力が、こもる。
止められない。腹が、満たされるから。


 咀嚼してると、友達の口が開いていた。


 ────それでいい。

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