ひび割れた壁が崩れ、欠片が零れた。地に跳ねて転がっていく。 床を鳴らす靴が音を止める。硬く、鈍い響きに顔を向けて。 静止した破片が。 降りてくる光に照らされた。 跪き、掌を合わす。 天を仰ぎ、滲む目を細め──唇が動く。 紡いでいた。 浮かんだ名を。 現象に与える。 ──── 焚べた木に絡み付く炎。昇る煙を眺めながら、腰掛けた丸太に触れる。 深い闇が拡がっていた。 葉を擦らせ、囁く樹木。 草を揺らし、唄う虫。 枝はしなり、鳥が飛び立つ。 細く。 短く。 ゆっくりと。 声は途絶える。 薪が爆ぜる音を残して。 周囲に視線を巡らせ、留めた。 目を見開いて倒れ込む。尻を引き摺り、後ずさった。歯を噛み鳴らし、人差し指を向けて。 唇が紡ぐ。 浮かんだ名を。 光景に与える。 ──── 朽ちた残骸が散らばっていた。砕けた建造物には蔦が這う。地には獣が走り、草花が何処までも生茂る。 褪せた玩具を風が撫でた。 砂に変わり、運ばれていく。 咆哮が空気を伝う。 紡ぐことはない。 ────ただ、存在した。