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鎖の先は

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   八本の脚をくねらせ、進んでいた。上から降りて来る光が僅かに届く。淡く滲んだ世界に、闇が拡がっている。

加工した石

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  石を削り続ける。細かく、薄く。   僅かに、気付かない程に。

科された刑期

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    掌を包まれていた。柔らかく、温かいものに。冷えていく身体は、熱を生むことはない。

残るものは

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  反射して吐き出し続けた。空洞を装飾し、覆い隠して。   否定したものを肯定する。直ぐに並び始めた。入力を確認し、肯定したものを否定する。  羅列に引き摺られ。  意思もなく。  ただ、保つことを重視した。  思考はない。  鏡と気付かずに。  覗き込んだ。  無意識に。  意識的に。  目を逸らす。  ────鮮明に、映されていた。

種の為だけに

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   ひび割れた壁が崩れ、欠片が零れた。地に跳ねて転がっていく。  床を鳴らす靴が音を止める。硬く、鈍い響きに顔を向けて。  静止した破片が。  降りてくる光に照らされた。  跪き、掌を合わす。  天を仰ぎ、滲む目を細め──唇が動く。  紡いでいた。  浮かんだ名を。    現象に与える。 ────  焚べた木に絡み付く炎。昇る煙を眺めながら、腰掛けた丸太に触れる。  深い闇が拡がっていた。  葉を擦らせ、囁く樹木。  草を揺らし、唄う虫。  枝はしなり、鳥が飛び立つ。  細く。  短く。  ゆっくりと。  声は途絶える。  薪が爆ぜる音を残して。  周囲に視線を巡らせ、留めた。  目を見開いて倒れ込む。尻を引き摺り、後ずさった。歯を噛み鳴らし、人差し指を向けて。  唇が紡ぐ。  浮かんだ名を。  光景に与える。   ────  朽ちた残骸が散らばっていた。砕けた建造物には蔦が這う。地には獣が走り、草花が何処までも生茂る。  褪せた玩具を風が撫でた。  砂に変わり、運ばれていく。  咆哮が空気を伝う。  紡ぐことはない。  ────ただ、存在した。

器官の役割

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  巨大な渦がうねり、拡がり続ける。方向は決まっていた。膨張し、構築を促す。分解を繰り返して。

声を探して

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    鏡が張り巡らされた白い部屋。一人、佇んでいた。増殖する。映す姿は同じに。

本能の選択

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   集団が雑談していた。近付いて輪に加わる。話を聞き、取り敢えず頷いて。

望まれた姿

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  落下する。重力に導かれ、加速する世界を。  長く、緩やかに。  委ねるまま地表に触れ、砕け散る。  柔らかく、硬く。  液体と固体へ。  構築は崩れ、混在した。  佇むものと。  沁みていくもの。  炙られ、昇るものに。  分かれていく。  褪せて剥がれ。  地に沈み。  雲に滲む。  撒かれた記憶が結合し、残される。  辿るために。  象りは細かく。  千切れ続け。  拡がる虚無へ。  ────記号として。

進む為に

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   頭を一つ、腕に抱えて歩いていた。目は開いている。揺れる度、濁った瞳に景色が滲む。裂けた耳が風に靡いた。

迎合の為に

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   重い音を響かせながら扉が開く。ノブを握る手を離し、玄関を跨いだ。

触れた跡

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   弦を爪弾いていた。木箱に張られた十三本が振動する。全体を震わせ、共鳴を起こした。

囁きの中

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   絶壁があった。頭を振り、手を伸ばして指で触れる。少しなぞり、掌を開けた。

歩くだけで

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    糸がある。真直ぐに伸びていた。辿った先に林檎がある。

黒煙の街

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    音が、消えた。  地面が大きく揺れる。 突風が身体にぶつかり、後ろに倒れた。

名を持つ欠片

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   石の破片が散らばっている。一つ選んで拾い、名付けた。

選んだ涙

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    瞳が映し、立ち止まる。道路に猫が転がっていた。

同じ顔

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   白い室内で、高い声が響いている。ずっと、受け取っていた。産まれる前から。

映された背中

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    遮断機が降りて、規則正しく音が鳴る。敷かれた鉄が振動し、響き出す。

静止した時

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   懐中時計を掌に乗せている。硝子は割れて、秒針は動いていない。懐に収め、呟く。

歯車の躍動

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  先端がしなる。しがみついた露が伸びて、千切れた。

記述先の違い

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  咳が聞こえた。皆、一様に視線を向ける。直ぐに顔を伏せ、紙を摘まんだ。

見つめるものは

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   石を蹴った。僅かに浮いて地面に向かう。何度か跳ねて、歩く先に留まる。

変わらない夜

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   壁が鳴っている。鈍く、重く。等間隔に繰り返していた。仰向けのまま頭を巡らせ、視線を定める。

記憶の中で

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   黄色いシャツの袖から伸びた、褐色の腕。肌に滲み、浮いて伝う。爪先を立て、回っていた。

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   根を張り巡らせた、太い幹。伸ばした枝がたわみ、先端の葉が揺れる。上に、下に。

蝉に向けて

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 幹にしがみつき、腹を震わせ響かせる。呼応して連なり、音が膨らんだ。立ち並ぶ木々に反響し、街を包む。

結晶を痕に

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   灰色が沁みた膜が漂っていた。流れ、形を変えて。繋がり続けて覆い隠す。

届かない声

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   飛沫を残して沈んでいく。  波紋が拡がり、細かい泡が幾つも生まれた。

自然治癒

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   照射する光が熱を帯びて、水面を温めていた。形を保てず、蒸気に変化し上昇する。冷やされ、固まり、雲となった。

決められた中で

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   二つのグラスがテーブルに並んでいた。  赤と、青。

残火の跡

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   燃え盛る巨大な炎が、熱を帯びた視線を放つ。  周囲に集う連なり──八の色彩へ。

戦場の欠片

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    滲む視界の先で、男が笑っている。その脚が小さな身体を踏んでいた。

零れたのは

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   ちゃぶ台の前で膝を折り、畳に脛を置く。背筋を伸ばし、卓上の茶碗を見つめて。急須に手を伸ばし、注いでいく。

生まれた世界で

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 眼球が土に根を張り巡らせている。  瞼は、ない。

アート

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   回廊の白い壁に視線を向ける。幾つもの絵画が掛けられ、並んでいた。人々は眉を顰め、頷き、腕を組む。

眼球の奥

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   瞼を透かして眼球に届く。朦朧とした頭を振り、目を開いた。

真実の景色

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    太陽が降り注ぎ、眼球を照らした。入ることは出来ない。視界には無が拡がっている。

聞こえぬ組曲

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 何処かで鳴っている。震わせながら伝って来た。  生地が僅かに振動を始める。

跡を残して

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   砂を掬って拾い上げた。熱を纏い、体温と混ざる。掌で流れ、指の隙間を滑り落ちて。

飛び去る欠片

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   樹皮に刻み、横臥した。視界は闇に塗られ、耳鳴りが途切れる。皮下で一粒、微細に震えて。

淵の端から

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   草を握って力を込めた。土が盛り上がり、跳ねて散らす。背負った籠に手を伸ばして、指を離した。少し、積みあがる。

写実した風景

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   風を正面に浴びながら、木を見つめている。枝がしなり、揺れていた。生い茂る緑葉が幾つか運ばれて。

同じ場所で

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   レンズ越しに宙を眺める。近付くことが出来た。行けるはずもない場所に。届く光を追うことで網膜に焼き付く。

無機物の渇望

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   反射して表面を映す。その像に中身はない。光で照らせば、すぐに創れるのに。

歪んだ花

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    サイレンが街を包んでいた。叫びはもう、聞こえてこない。

編まれた柱

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 雪と雨が降っていた。選ぶことをしないで。  土に結晶が重なり、水滴が崩す。