投稿

作品アーカイブ (目次)

イメージ
  更新通知⇨ RSSで新作を受け取る *文章にAIを一切使用していません。自分の感性だけで書きたいからです。曲と画像はAIで作成しています。 ─最新─              「歪んだ花」         境界   「編まれた柱」       循環 「消えていく顔」      断片 「錯覚のまま」       断片 「ただ、純粋に」       価値観  ─ピックアップ─ テーマ   万有 「10^-10^50の虚構」                  ─テーマ別─ ─境界─           十八作品 ─時間─               七作品 ─循環─           十七作品 ─感情─           十四作品 ─万有─               八作品 ─価値観─       十七作品 ─日常─           十一作品 ─断片─               八 作品 ─無─                   三作品 ─掌編─    「歪んだ花」         境界 「消えていく顔」       断片 「錯覚のまま」        断片 「ただ、純粋に」       価値観 「選べるなら」        断片 「種の中で」         循環 「いない気がして」      境界 「跳ねたコイン」       価値観 「溢れた珈琲」        境界 「10^-10^50の虚構」       万有 「少女の花弁」        感情 「巡る日常」         境界 「視線と誇り」        感情 ...

歪んだ花

イメージ
    サイレンが街を包んでいた。叫びはもう、聞こえてこない。 ────  透明な欠片が床に散らばっていた。造花が傍に横たわる。紅い花弁がまばらに千切れていた。脚を動かすと、靴底に細かく砕けた音が鳴る。  窓の外から低い唸りが近付く。口を掌で覆い、息を止めた。声が遠ざかっていく。  額を拭うと、袖が濡れた。  薄闇の中、時計の針が進んでいる。規則的に響いて。短針と長針が12を指していた。  呼吸を沈めて引き出しを探る。重なる布を掻き分けて。  ──指先に、冷たく触れた。  目を細め、静止する。  震える手で掴んだ。  ズボンと腹の隙間に差し込み、ドアに向かう。ノブを握り、静かに捻る。  軋む音が僅かに響いた。  廊下を摺り足で進む。壁に手を添えて、辿りながら。玄関から聞こえる。  ──金属を擦る音。  瞬きを繰り返して、前方を睨む。腹に手を添え、屈んだ。  肌と布の隙間から抜く。冷たく、硬いものを。目を見開き、闇を見つめて。  金属音が繰り返され、止まった。  ──静寂。  鈍く、重く反響した。息を吐く音を呑み込む。ドアがたわみ、木板が裂けた。空気が流れ込み、シャツが靡く。  頭を揺らす影。頬には丸い穴が空いていた。赤い滑りが滴り落ちて、床を濡らしていく。紅く染まった髪がまばらに千切れていた。  引き金を引く。何度も撃鉄を起こして。  胸に染みが幾つか滲む。  虚な瞳と視線が合う。 「君もか......」  見慣れた女。  歪んだ、顔。  サイレンが鳴っている。  小さなレンズが、見つめていた。 ────  モニター前で頷き、周囲を見渡した。笑みを浮かべて軍服の男に近付く。腕を広げ、拍手を浴びて。  グラスを掲げた人々が、澄んだ音を響かせる。紅く波打たせ、唇を濡らした。  ────欠片が散らばる。造花と共に。

編まれた柱

イメージ
 雪と雨が降っていた。選ぶことをしないで。  土に結晶が重なり、水滴が崩す。  ほどけ、  混ざり、  沁みこむ。  沈んでいく。地中に拡がりながら。  根が取り込み、虫が啜って。  脈動し、昇っていく。  葉が茂る。  花が咲いて。  覆われた隙間から、太陽が覗いた。  雪と、雨と共に。  絡み合い、蒸気となる──柱として。  ────天地を渡した。

消えていく顔

イメージ
 女の顔が紅潮していた。唾を飛ばし、捲し立てて。対面に座る、その視線を受け止める男。顎髭を撫で、静かに紡いだ。  目を見開き、細い腕を振り降ろす。  ──机が鳴る。  グラスが僅かに跳ね、琥珀が波打つ。零れた一滴が天板を伝い、木目に滲んだ。  視線が集まる。  痺れる掌を摩り、紅い唇を閉ざした。  火照った頬を震わせながら。  男が周囲に顔を巡らす。幾つもの目が散らばった。  向き直り、濡れた瞳を見据える。咳払いを、一つ漏らして。  女が大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。  身体が冷える。  頬も染まっていない。  にこりと微笑み、席を立った。  男の鼓動が早くなる。  不規則に言葉を連ねていた。  ヒールが床を硬く鳴らす。  交互に繰り返す先で、ドアが開いた。  鈴が、揺れる。  闇が覗き、女を呑み込む。  澄んだ音を残して。  ────顔はもう、思い出せない。  

錯覚のまま

イメージ
  記憶を辿って言葉を交わす。何度も見た、同じ顔と。僅かにズレて。  帳が降りて食事をし、身体を洗う。横たわり、意識を失う。空が暗闇に染まる頃に、毎日繰り返された。  細胞が震え──入れ替わる。  気付かぬままに。  寝息に誘われ、羽音が近付く。静寂の中で高く響いている。別の夜にも鳴っていた。  区別は、つかない。  日差しが瞼を覆う。痕が残る腕を擦り、半身を起こす。細めた目で窓を見つめた。  立ち上がり、ハンガーに手を掛ける。袖を通して玄関に向かった。  見慣れた顔が見送る。浅い皺が一本、刻まれていた。手を振り返したあと、ノブを掴む。ゆっくりとドアが軋んだ。  同じ場所に向かう。  ────髭が少し、伸びた顔で。

ただ、純粋に

イメージ
   一人、ベンチに腰掛けていた。ほつれた服の袖から覗く手は、黒く汚れている。膝に置いた袋を弄り、パンを掴んだ。皺だらけのビニールが、擦れた音を鳴らす。  日焼けした顔の前に取り出し、じっと見つめた。唇を舐めて、一口齧る。咀嚼しながらペットボトルに手を伸ばした。  喧騒が行き交う歩道を眺め、蓋を捻る。蒼空から注がれる光を、水が反射していた。  日差しを影が遮る。顔を上げ、目を細めた。男が頭を下げている。指先をパンに向けて。  頷いて微笑み、袋を差し出す。受け取って去っていく背中。飲み口を咥え、喉を湿らす。カルキの臭いが僅かにした。  小さく息を吐き、俯いて目を閉じる。  靴音が近付いて来た。  瞼を開く。  皺だらけのビニール袋が目の前で揺れていた。先程の男が微笑んでいる。ポケットから紙幣を取り出し、差し出して。  分厚い束。  男の微笑み。  ──視界が滲んだ。  被りを振り、顔を両手で覆う。喧騒が遠ざかる。ゆっくりと立ち上がり、頭を下げた。  顔を上げて視線を合わせる。  静かに揺らして。  ────首を、左右に。